仕事帰りにスタバのドライブスルーを寄り道して、窓越しにカフェを受け取って、その時に初めてディカフェを注文するのを忘れていたことに気づいて後悔することがあります。
夜のコーヒーと睡眠不足の関係は、世界中の愛飲者の気になるところなのでしょう。
こんな研究がありました。
毎日のカフェイン摂取と慢性的な睡眠不足が脳にどのような影響を与えるか?です。
最新の研究によれば、カフェインの常習的な摂取が、睡眠不足による脳の灰白質(グレー・マター)への影響を抑えることが分かりました。
この研究では、36名の健康な成人を対象に、9日間にわたって実験が行われました。
まず、参加者は1日間の適応期間を経て、2日間の通常の睡眠をとりました。
その後、5日間連続で毎日5時間しか眠れない「慢性的な睡眠制限(CSR)」を行い、最後に8時間の睡眠で1日回復しました。
参加者の半数はこの期間中、カフェインを含むコーヒーを摂取し(CAFFグループ)、残りの半数はカフェインを含まないコーヒーを摂取しました(DECAFグループ)。
研究の結果は以下の通りです。
– DECAFグループでは、CSR中に脳の灰白質が増加しましたが、CAFFグループでは減少しました。
灰白質は脳の細胞体が多く含まれる部分で、情報処理や運動機能、感覚、意思決定などに関与しています。灰白質の増加は、これらの機能が活性化されている状態を示します。一方、灰白質の減少は、これらの機能が抑制されている状態を示します。つまり、DECAFグループでは睡眠不足にもかかわらず脳の機能が活発化していたのに対し、CAFFグループでは脳の機能が抑制されていました。
– 視床の灰白質はDECAFグループで増加しましたが、CAFFグループで減少し、他の部位よりも回復が遅れました。
視床は感覚情報を処理し、脳の他の部分に送る役割を果たします。視床の灰白質の増加は感覚処理が活発であることを意味し、減少はその逆です。カフェインを摂取したグループでは、視床の機能が抑制され、その回復も遅かったことが分かりました。
– 灰白質の減少は、基底アデノシンA1受容体(A1R)の利用可能性が低い個人でより顕著でした。
アデノシンA1受容体は睡眠と覚醒の調節に関与しており、その利用可能性が低いと、カフェインの影響で脳の灰白質がより減少することが確認されました。つまり、アデノシンA1受容体が少ない人は、カフェインの影響を受けやすいということです。
– カフェイン摂取がCSRによる脳の可塑性を抑制することが示されました。
可塑性とは、脳が経験や環境に応じて変化する能力のことです。カフェイン摂取は、この脳の柔軟性を抑制し、灰白質の増加を防ぐことが分かりました。
– 視床以外の部位では、8時間の睡眠後にCAFFグループの灰白質の減少は回復しました。
視床以外の部位では、カフェイン摂取による灰白質の減少が一晩の回復睡眠で元に戻りました。しかし、視床は完全には回復せず、長期間の影響が残る可能性があります。
これらの結果から、カフェインは睡眠不足による脳の機能低下を一時的に抑えることができるものの、長期的には脳の柔軟性や機能を低下させる可能性があることが示されました。
カフェインを適度に摂取することと、十分な睡眠を確保することが、脳の健康を保つために重要であることを忘れないようにしましょう。
結局は「適度」と「十分」に落ち着くのです。
参考文献:
Lin, YS., Lange, D., Baur, D. et al. Repeated caffeine intake suppresses cerebral grey matter responses to chronic sleep restriction in an A1 adenosine receptor-dependent manner: a double-blind randomized controlled study with PET-MRI. Sci Rep 14, 12724 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-61421-8