マインドフルネス瞑想で起こる脳波の変化
マインドフルネス瞑想と聞くと、「リラックスするための方法」と考えがちですが、実は、脳の中ではもっと複雑な変化が起こっているようです。
最新の研究によって、瞑想中の脳波変化は単なるリラックス状態だけでは説明できないことが明らかになりました。
この研究では、18歳から35歳の健康な若者52名を対象に、安静時とマインドフルネス瞑想中の脳波(EEG)と皮膚電気伝導度(SCL)を測定しました。
参加者は瞑想中、「呼吸に集中」し、その間の脳波とSCLを記録しました。
その結果、アルファ波とシータ波に特に興味深い変化が見られました。
瞑想中は安静時に比べて、脳のアルファ波(8-13 Hz)の振幅が減少することがわかりました。
一般的に、アルファ波はリラックスや集中に関連する脳波と考えられていますが、今回の研究では、瞑想によってむしろ集中が強化され、その過程でアルファ波が減少している可能性が示唆されました。
さらに、fPCAというデータ駆動型の解析手法を用いた結果、瞑想中に「デルタ-シータ-アルファ」という複合的な脳波成分が増加していることがわかりました。
このことから、瞑想はただ静かに過ごす時間ではなく、脳内で活発な神経活動の変化を引き起こしていると考えられます。
興味深いことに、皮膚電気伝導度(SCL)は、安静時と瞑想時で有意な変化が見られませんでした。
SCLは通常、身体のリラックスや緊張を示す指標です。
今回の結果から、瞑想中の脳波変化は、身体的なリラックスとは異なる「脳の活動的な静寂」を示していると考えられます。
研究結果のポイント
- アルファ波の減少: 瞑想中、アルファ波の振幅が安静時に比べて減少。
- 複合成分の増加: デルタ-シータ-アルファの複合成分が瞑想中に増加。
- 皮膚電気伝導度(SCL)の変化なし: 瞑想中も安静時と同様に、SCLに有意な変化はなし。
これらの結果を総合的に見ると、マインドフルネス瞑想は、単にリラックスするだけでなく、「リラックスしたまま覚醒している」状態を脳に作り出すと考えられます。
瞑想中、脳はただ休んでいるのではなく、新しい注意の形を探索しているのかもしれません。
このことが、瞑想が持つ「単なるリラクゼーションとは異なる効果」を引き出しているのでしょう。
次に瞑想を試す際には、脳内で何が起こっているのかに意識を向けてみてください。
普段の静けさの裏には、実は多くの「静かな活動」が秘められているはずです。
参考文献:
Duda AT, Clarke AR, Barry RJ. Mindfulness meditation alters neural oscillations independently of arousal. Int J Psychophysiol. 2024;205:112439. doi:10.1016/j.ijpsycho.2024.112439