『自分』

ふと手にした本に、安岡正篤氏の言葉が載っていました。

含蓄のある言葉で、思い当たることもありましたので紹介しますね。

 

    自  分

 

自分というものは良い言葉である。

 

ある物が独自に存在すると同時に、

また全体の部分として存在する、

自分の自の方は独自に存在する、

自分の分の方は全体の部分である。

 

この円満無碍(むげ)なる一致を表現して「自分」という。

 

われわれは自分を知り、自分を尽くせば良いのである。

 

しかるにそれを知らずして自分、自分といいながら、

実は自己自私を恣(ほし)いままにしている。

そこにあらゆる矛盾(むじゅん)や罪悪が生ずる。

 

そういえば、何でもないようで、

実は自分を知り、自分をつくすことほど、

むずかしいことはない。

 

自分がどういう素質、能力を天賦(てんぷ)されているか、

それを称して「命」という。

これを知るのを「知命」という。

 

知ってこれを完全に発揮してゆくのを「立命」という

 

『安岡正篤 一日一言』より(致知出版社刊)

 

 全体へ働きかけ貢献しながら、それを自らの喜びとして生きる。

あの三銃士がモットーとしたのが「One for all, all for one.」(ひとりは万人のために、万人はひとりのために)

「自分」という言葉に込められた意味を考えると感慨深いですね。

 

Micro_Cosmo_in_Achamoth

「小さな異邦人」

短編集はあまり手にしないのですが、「週刊文春ミステリーベスト10」や「このミステリーがすごい!2015年版」で評判が良かったのと

昨年満65歳で逝去された連城 三紀彦さんの作品ということで読みました。

 

 小さな異邦人  連城 三紀彦 (著)

連城三紀彦さんはファンも多いのですが、但しこの10年間はご家族の介護や自身の闘病で執筆量が落ちたまま亡くなられたそうです。

けれども、やはり名作と呼ばれる作品群が絶版となって埋もれていくことを惜しむ声が多く、没後1年目にして傑作集(選者は故人を敬愛する4人の作家)が出版されたり、新刊や旧作の復刊など、今、大きく再評価されている作家です。

ここまで愛され続けている多くの作品を遺していることは、驚きですし素晴らしいことですね。

 

連城三紀彦さんは、男女間の心理、特に恋愛や愛憎を扱った抒情的なミステリーを描き出すことが得意な方です。

ですから恋愛小説でもあるんですね。

最後の一文を読むまで、何が真実なのかわからない。期待通りに読者は意表を突かれます。

 

短編一つひとつが、目の前に映像として浮かび上がってくるしっとりとした文章で、作家の世界に見事に引き込まれてしまいました。

 

ステレオグラム(立体画)

 

ステレオグラム(立体画)は、1990年代に「マジックアイ」という本が出たおかげで、だいぶ周知されていますね。

そういう私も、時々本屋で見つけては立ち読みしています。

二次元の画像を平行法や交差法の裸眼立体視を駆使することで、そこに隠された模様や文字を三次元として浮かび上がらせるものです。

 

まずは平行法のやり方をおさらい。(ウィキペディアから)

1.目から力を抜きぼんやり見るような感じで焦点を画像より少し奥に合わせる。すると画像がぼやけて分裂する。

2.焦点を奥へ移動させてゆくと、分裂した画像がお互い中央に向かって重なってゆく。

3.左右二つの像がちょうど中央で融合する位置で焦点の移動を止める。

4.うまく重なるように焦点を前後に微調整する。成功すれば中央画像が立体的に見える。

 

ということで、下の画像で挑戦してみてください。(これもウィキペディアから)

Stereogram_Tut_Random_Dot_Shark

 

下の方に答えを載せておきますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こういう立体画が見えましたか?

Stereogram_Tut_Shark_Depthmap

 

GIF画像をつかうとこの立体のサメが泳ぐ様子がわかります。(スマホでご覧の方は動かないかも知れません。)

 

Stereogram_Tut_Animated_Shark

 

もうひとつ。

このチェス盤。見事な立体感ですよね。

Chess_Single_Image_Stereogram_by_3Dimka 

 

「寒さ極まる…」

 

朝、寒いなあと震えていたら、車の温度計が一瞬10℃になっていました。

それは写真におさめられなかったのですが、それでもやっぱり11℃です。沖縄ではこの冬一番の寒さではないでしょうか。

0209gaikion

天気情報のサイトを見ていたら、「寒さ極まる週明け」という表現をしていました。

日本各地の寒さに比べたら、沖縄の寒さなんかまだましと思いますが、沖縄県民としてはやはり寒いです。

おまけに小雨も降っています。北風が吹きつけています。

慣れない寒さ対策が必要ですね。

 

そういえば、プロ野球のキャンプが沖縄県の各地で行われています。

選手には、この天気は良くないなあ。

天気なのでどうにもならないのですが、申し訳ない気持ちになります。

20150209kion

 

 

 

Ig nobel(イグノーベル) 賞

 

 イグノーベル賞を創設したマーク・エイブラハムズのTEDのプレゼンです。

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イグノーベル賞というのは「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられる賞。

もちろん本家のノーベル賞のパロった名称です。

 

毎年、風変わりな研究をおこなったり社会事件などを起こした10の個人やグループに対して、授与されるようなのですが、リストを見ても面白いですね。

辛辣な皮肉が込められた受賞者がいる一方で、純粋に笑いと賞賛を贈りたい受賞者もいます。

 

 

この動画で紹介されているエレナ・ボドナー博士の発明は傑作でした。

緊急時に素早く変形させて一対のガスマスクにできるブラジャーです。

博士は発明の理由をこう説明してくれたそうです。

 

「彼女はウクライナで育ち― チェルノブイリ原子力発電所事故の被害者を仲間の医師と治療してきました。

彼らがのちに発見したところによると非常に重い医学的疾患の多くは患者が吸い込んだ粒子が原因でした。

ですから、彼女はいつも不測の事態が起きたとき、どこでも簡単なマスクが使えるようにできないものか考えていました。

数年後、アメリカに移住した彼女に子どもができます。

ある日、彼女が床に目をやると乳児の息子が彼女のブラを拾い上げてブラを顔にかぶせていました。それでアイデアをひらめいたのです。」

 

傑作なのが2009年の授賞式のセレモニーの中で、ボドナー博士がそのブラ(ガスマスク?)の試作品を実演して紹介したシーンです。

ガスマスクを嬉しそうに装着しているのが本家2008年ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンと2001年ノーベル物理学賞受賞者のヴォルフガング・ケターレ。

ignobel

 

 

除水速度と生命予後 文献から

 

年末に院内抄読会(ジャーナル・クラブ)で取り上げた文献です。

『透析中の急激な除水速度は心臓疾患の死亡リスクを上昇させる』

Rapid fluid removal during dialysis is associated with cardiovascular morbidity and mortality

Kidney Int. 2011 January;79(2):250-257

 

アメリカの約1800名の透析患者が参加した研究です。

透析量やダイアライザーの性能でグループ分けをして有害事象を比較した研究(HEMO study)が元ネタなのですが、そのデータをもとに解析をしたようです。

 

透析患者さんは塩分や水分制限が適切でないと、体内に水が溢れた状態になってきます。

透析は毒素を除去するのと同時に「除水」という大切な役割を担っています。

 

例えば、透析患者のAさん。

前回の透析終了から2Kgの体重増加があったとすると、2KgのほとんどがAさんが口にした水分の量と考えます。Aさんに限らずよっぽどの大食漢でなければ2日間で2Kg太ったということはまず考えにくいですよね。体に水が溜まったと考えた方が理屈に合います。

 

その2Kgの水を透析時間内に除水しますから、5時間透析の場合、時間あたり0.4Kg(400cc)の除水をかけていけば2Kgを除水することができます。

Aさんの体重が50Kgだとすると、体重1Kgあたり8ccを1時間で引いていく計算です。

この体重1Kgあたり1時間の除水量を UFR (Ultrafiltration rate:除水速度)と呼びます。

ですから、Aさんの UFR は、8 ml/hr/Kg ということになります。

 

この文献では、UFR が10ml/hr/Kgを超えると心疾患と死亡率が増大したと言うのです。下のグラフをご覧ください。

20141225 除水速度と生命予後

 

縦軸が死亡リスク。

10ml/hr/Kg を境に急激なカーブで死亡リスクが急上昇していることがわかりますね。

 

なぜそうなのかをこの文献ではこう考察しています。

除水というのは血管内から直接に水分を除去することにほかならない。除水速度が大きいということは血管内を満たしている血漿量が大幅に減少してしまうということ。血液は酸素を供給するものだから、言い換えれば、それは心筋の一過性の虚血をきたしてしまう。

たとえ虚血を起こしていなくても、除水速度はどうも心筋収縮障害とも関連しているようだ。そのため心疾患と死亡率が増えてしまうのだろう。

 

除水速度をあげない対策については以下のように述べています。

20141225 除水速度と生命予後2

 

 

イア・オラナ・マリア(マリア礼賛)

 

ポール・ゴーギャンはタヒチの人々を生命力あふれる光と色で表現しました。

その中でもこの「イア・オラナ・マリア」はゴーギャンらしい色使いでエネルギーが輝いている絵です。

このタヒチの聖母マリアの表情は穏やかで神秘的で温かく、その姿や雰囲気は大地の実りを思わせます。

奥にいる天使には羽がありますし、肩に乗ったイエスには光輪が見えます。まさしく宗教画なのですが、描かれている風景が南の楽園のせいか日常的ですらあります。

私の中の「タヒチってこんな感じ」という勝手なイメージです。たぶん、現実のタヒチとは違うのだろうというのは承知のうえで。

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ゴーギャンの中の「地上の楽園」を表現するのに、タヒチは良い対象だったのでしょうね。

 

 

恵方巻き

ハロウィン・パーティーとならんで、私の体にまだ馴染んでいない風習が「節分の日に恵方巻きを食べる」です。

気がついたら、節分のイベントに「恵方巻きを食べること」が当たり前のように広まっているのですね。

もともとは大阪地方の習わしだったということを聞きました。

コンビニやスーパーを覗いたらキャンペーンをしているみたいで、皆が食べているので私も食べました。

このあたりは流行に乗っかってみる方です。

 

「その年の恵方(今年は西南西)に向かって、願いごとを思い浮かべながら無言で食べる」

太巻きでしかも長いので、かなりのハードルです。

 

願いごとを思い浮かべているつもりが、あまりに食べごたえがありすぎて、いつの間にか「無言で最後まで食べれますように」という願いごとにすり変わっていることに気づいてしまいました。

(なるほど!そういうことかあ!)

確かに願い事はかなえられました。願いどおりに無言を貫き、最後までおいしく食べることができました。

でも、本命の願いごとって途中でどうでも良くなってしまうんですね。すっかり忘れてしまっていましたから。

 

これは執着を捨てよということに違いない。

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「ホーソン効果」

 

「ホーソン効果」という言葉があるそうです。実は勉強不足で最近初めて知りました。

Wikipediaにはこう説明があります。

ホーソン効果(ほーそんこうか/英:Hawthorne effect)とは、治療を受ける者が信頼する治療者(医師など)に期待されていると感じることで、行動の変化を起すなどして、結果的に病気が良くなる(良くなったように感じる、良くなったと治療者に告げる)現象をいう。ホーソン効果は、プラセボ効果の一部として統計上扱われる場合がある。ホーソン効果は、米国のホーソン工場(en)で、労働者の作業の効率を向上目指すための調査から発見された現象であるためこの名がある。 

もともと1920年代にアメリカのホーソン工場で働く労働者の作業効率の向上を目指すための調査から発見されたもので、この名前があるそうです。

さらにこう解説があります。

 調査は工場の何を改善すれば一番効果的かを調査の目的とした。その結果、労働者への周囲や上司が関心を高めることが、物理的要因以上に効果のあることが判明した。このように、人は一般的に関心を持つ人や期待する人の心に応えようとする傾向があるとされる。
 そのため、信頼を受けている医師などの期待に応えるため、患者が症状を告げなかったり症状の改善があったかのような態度を、意識的や無意識的に行なうことで、統計上症状が改善されたにみえることを、特に統計上のホーソン効果とよぶ。

これには心当たりがあります。

「この前、話していた頭痛はどうなりましたか?処方したお薬効きましたか?」と訊くと「うん。よく効いた。大丈夫だよ。」と言うAさん。

そばで聞いていた娘さんが、たまらず

「だって、昨日も頭が痛いって寝込んでたでしょう?」

と代弁してくれました。

Aさんはさらに「先生にちゃんと言わないとダメだよ。」と諌められて小さくなっていました。

Aさんには、こういう心理が働いていたのかも知れませんね。受けとめる医療者が気をつけたいことです。

 

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さだまさし 「いのちの理由」

 

さだまさしさんの歌は昔から好きで、私の心にいつでも響いてきます。

私は中学生の頃にフォークギターを取り出しては下手なりに歌っていました。変声期の私には高音が苦しくてガチョウが悶絶するように聞こえていたようですが。

最近では、時々聞いては涙腺がゆるくなって泣きながら聞いています。

 

「いのちの理由」は、さださんの歌の中でもひときわメッセージがシンプルで力強いものです。

歌詞がすべてを語っていますね。

 

 

http://youtu.be/CewhQcJjMdw