除水速度と生命予後 文献から

 

年末に院内抄読会(ジャーナル・クラブ)で取り上げた文献です。

『透析中の急激な除水速度は心臓疾患の死亡リスクを上昇させる』

Rapid fluid removal during dialysis is associated with cardiovascular morbidity and mortality

Kidney Int. 2011 January;79(2):250-257

 

アメリカの約1800名の透析患者が参加した研究です。

透析量やダイアライザーの性能でグループ分けをして有害事象を比較した研究(HEMO study)が元ネタなのですが、そのデータをもとに解析をしたようです。

 

透析患者さんは塩分や水分制限が適切でないと、体内に水が溢れた状態になってきます。

透析は毒素を除去するのと同時に「除水」という大切な役割を担っています。

 

例えば、透析患者のAさん。

前回の透析終了から2Kgの体重増加があったとすると、2KgのほとんどがAさんが口にした水分の量と考えます。Aさんに限らずよっぽどの大食漢でなければ2日間で2Kg太ったということはまず考えにくいですよね。体に水が溜まったと考えた方が理屈に合います。

 

その2Kgの水を透析時間内に除水しますから、5時間透析の場合、時間あたり0.4Kg(400cc)の除水をかけていけば2Kgを除水することができます。

Aさんの体重が50Kgだとすると、体重1Kgあたり8ccを1時間で引いていく計算です。

この体重1Kgあたり1時間の除水量を UFR (Ultrafiltration rate:除水速度)と呼びます。

ですから、Aさんの UFR は、8 ml/hr/Kg ということになります。

 

この文献では、UFR が10ml/hr/Kgを超えると心疾患と死亡率が増大したと言うのです。下のグラフをご覧ください。

20141225 除水速度と生命予後

 

縦軸が死亡リスク。

10ml/hr/Kg を境に急激なカーブで死亡リスクが急上昇していることがわかりますね。

 

なぜそうなのかをこの文献ではこう考察しています。

除水というのは血管内から直接に水分を除去することにほかならない。除水速度が大きいということは血管内を満たしている血漿量が大幅に減少してしまうということ。血液は酸素を供給するものだから、言い換えれば、それは心筋の一過性の虚血をきたしてしまう。

たとえ虚血を起こしていなくても、除水速度はどうも心筋収縮障害とも関連しているようだ。そのため心疾患と死亡率が増えてしまうのだろう。

 

除水速度をあげない対策については以下のように述べています。

20141225 除水速度と生命予後2

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA