脳の健康と腸内細菌叢:アルツハイマー病の新たな視点

アルツハイマー病は、脳内のアミロイドβ(Aβ)プラークの蓄積や神経線維のもつれなどにより、認知機能が低下する複雑な神経変性疾患です。

特に海馬は学習や記憶に重要な役割を果たしており、アルツハイマー病の初期段階で影響を受けやすい領域です。

ところで、近年、アルツハイマー病における腸内細菌叢(マイクロバイオータ)の影響が注目されています。

腸と脳は、腸内細菌叢を介して相互に影響し合っており、腸内細菌叢の変化がアルツハイマー病の症状や病態に影響を及ぼす可能性があるというわけです。

 

元論文はこちら→

Grabrucker S, Marizzoni M, Silajdžić E, et al. Microbiota from Alzheimer’s patients induce deficits in cognition and hippocampal neurogenesis. Brain. Published online October 18, 2023. doi:10.1093/brain/awad303

 

この研究では、アルツハイマー病患者から採取した腸内細菌叢を若年のラットに移植してみたのでした。

すると、腸内細菌叢が海馬の新生ニューロン生成(成人海馬神経新生)に重要な役割を果たすことがわかりました。

つまり、移植されたラットは、認知機能の低下や記憶に関連する行動の変化が観察され、これは健康なコントロール群と比較して顕著だったのです。

さらに、アルツハイマー病患者の血清を用いた実験では、人間の海馬前駆細胞における新生ニューロンの生成が減少することが確認され、腸内細菌叢が血液を介して海馬の神経新生に影響を与える可能性が示唆されました。

この研究からは、アルツハイマー病の症状や認知機能の低下が腸内細菌叢の変化により引き起こされる可能性があることが示唆されています。

この論文を読んで、私が単純に知りたいと思ったのは、アルツハイマー病の患者の腸内細菌叢ってどんな特徴があったのかということでした。

腸内細菌叢を調べたら、アルツハイマー病のリスクがわかるということ?

そして、次に知りたいのは、「逆に、どんな腸内細菌叢だったらアルツハイマー病にならないのか?」ということですね。

それを押し進めれば、アルツハイマー病の治療に、腸内細菌叢を調整するアプローチが有望である可能性があります。

腸に届くようなカプセルか何かにつめて、それを毎日飲んで、腸内細菌叢を整えるのが普通の時代がくるかも知れません。

 

「ステージフライト」への備え

「ステージフライト」という言葉は、英語の「stage fright」から来ています。

つまり、舞台や人前でのパフォーマンスに対する不安や恐怖を指します。

具体的には、人前で話す、演奏する、演技するなどで緊張し、あがってしまう状態です。

「ステージフライト」は誰にでも起こり得る自然な反応ですし、特に初めての経験だったり、大勢の観客の前だったら、なおさらアガリまくってしまいますね。

「あがってしまっている」時には、心拍数が増加するものです。

息切れを起こしますし。手汗がにじみ、背すじが冷たく感じ、顔がほてり、声や膝の震え、口の渇き、胃腸の不調などの身体的症状が伴うものです。

そこまで冷静に自分の体の状態を観察できるはずがなく、頭はパニックです。

「ヤバイよヤバイよ」を通り越して、失神寸前だったという経験をした方もいるかも知れませんね。

多くの本やサイトには、「ステージフライト克服法」が紹介されているものですし、だいたい以下のポイントが挙げられています。

 

イベント前の準備

  • 事前準備:資料をよく理解し、覚え、質問に備える。
  • 運動しながらの練習:運動すると心拍数が上昇し、息切れや発汗が起こります。それを利用して、本番の状態を模擬体験するのです。不安な状態でもプレゼンテーションができるようにするわけです。
  • ビジュアライゼーション:ステージに立っている自分を想像し、不安を感じながらもそれを乗り越えること。
  • 自信の構築:自分に自信を持てる服装やマニキュアをします。
  • 「成長している自分」に焦点を当てる:「良いスピーカーになっている」と自分に言い聞かせる。
  • 目的に焦点を当てる:自分の発表が聴衆にとって有益であることを意識する。
  • 事前に聴衆の前で話す機会を得る:本番前に聴衆の前で話す機会を作る。

 

イベント中の戦略

  • ダブレット呼吸:2回吸って2回吐く。ゆっくりと深呼吸をして、緊張を和らげる。
  • グラウンディングオブジェクト:お守りや小石など、手に握れるモノを準備して、それに触れることで呼吸を整える。
  • 不安を受け入れる:不安を隠さず、それを受け入れる。
  • 感謝の気持ちを持つ:感謝の気持ちを表現し、不安を和らげる。

 

そうは言うものの、「ステージフライト」をこれで克服したという経験はあまりありません。

ただ、「ステージフライト」でぐちゃぐちゃになって、聴衆の皆さんに迷惑をかけてはいけないと思うので、事前の準備はちゃんとするようにはしています。

 

リラックスとリスクの間:座り続けることと抑うつ

静かな部屋でのテレビ鑑賞や心地良いソファでの読書など…。

このような平穏な時間が、「実は抑うつへの一歩となることがある」という研究があります。

私たちの精神的受動性が、どのようにして心の健康を左右するのでしょうか?

 

元論文はこちら→

Werneck AO, Owen N, Araujo RHO, Silva DR, Hallgren M. Mentally-passive sedentary behavior and incident depression: Mediation by inflammatory markers. J Affect Disord. 2023;339:847-853. doi:10.1016/j.jad.2023.07.053

 

この研究はイギリスで行われました。

研究者たちは、1958年生まれの成人を対象に、彼らの座位行動と抑うつの関連性を調査しました。

特に注目されたのは、精神的に受動的な座位行動―テレビを見るなど―と、それが抑うつ症状の発生にどのように関連しているかでした。

「受動的」というのは「受け身」であるということです。

つまり、つけっぱなしのテレビを何の気なしにずっと見ているようなものです。

研究の結果は、なかなか興味深いものでした。

受動的な座位行動は、抑うつのリスクを高めることが明らかになりました。

具体的には、このような行動により、抑うつ発症のリスクが43%高まるという結果が出たのです。

では、このリスク増加の背後には何があるのでしょうか?

ここで重要な役割を果たすのが、私たちの身体です。

研究では、ウエスト周囲径と炎症マーカーであるC反応性タンパク質(CRP)が、このリスク増加の一部を説明することが示されました。

つまり、受動的な座位行動が肥満や炎症を引き起こし、それが抑うつリスクを高めるというメカニズムが存在していたのです。

昔、昭和の子ども達が親にしつこく「テレビばっかり見てないで、外で遊んできなさい!」という叱責が、的を得ていたということになりますね。

しかしこの研究には、まだ解明されていない部分も多くあります。

受動的座位行動と抑うつの関連性は、体のサイズや炎症のレベルを通じてのみ説明されるわけではありません。

とはいえ、この研究は、私たちの生活習慣が心の健康に及ぼす影響に新たな光を当てているのだと思います。

つまり、ソファでの時間を少し減らし、身体を動かす時間を増やすことが、心の健康を守る一つの鍵となるのかもしれません。

座る時間とその質が、心にどのように影響するか。

人間の心と体というのは、ずっと座りっぱなしでいられるようには作られていないのかも知れませんね。

 

かゆみと黄色ブドウ球菌

日常の悩みの一つ、「かゆみ」。

多くの人が経験するこの不快な感覚は、実は皮膚の奥深くに隠された科学的な謎を秘めています。

特に、皮膚疾患に悩まされ、かゆみと長年戦ってきた人々にとって、最近の研究成果は希望の光となるかもしれません。

 

元論文はこちら→

Deng L, Costa F, Blake KJ, et al. S. aureus drives itch and scratch-induced skin damage through a V8 protease-PAR1 axis. Cell. 2023;186(24):5375-5393.e25. doi:10.1016/j.cell.2023.10.019

 

この研究では、皮膚のかゆみの原因として、黄色ブドウ球菌に着目しました。

この菌は特に、皮膚疾患においてよく見られる病原体ですが、その働きがかゆみにどのように関連しているのか、詳細は明らかになっていませんでした。

研究では、黄色ブドウ球菌が分泌する特定の酵素「V8」が、私たちの感覚ニューロンに作用し、かゆみを引き起こすことが明らかにされました。

この酵素は、神経細胞の表面に存在する「PAR1」という受容体を切断し、かゆみを誘発するのです。

さらに、この発見は治療の可能性をも拓くものになります。

PAR1の機能を抑制することで、黄色ブドウ球菌によるかゆみを軽減できることが示されています。

これは、かゆみに苦しむ人々にとって、大きな希望となり得るでしょう。

私たちが日々直面する「かゆみ」という現象は、単なる不快感以上の意味を持ちます。

かゆみとの長い戦いにおいて、この新しい知見は、多くの人々にとっての救いとなるかも知れません。

 

看護師とペットとの絆

現代社会で、私たちはさまざまな形で心のケアを求めています。

一方で、ペットとの交流は幸福感を高めると言われていますし、実際、多くの人がペットとの時間を過ごしています。

では、このペットとの絆が、特に看護師のような心身ともに厳しい職業に就く人々にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

最近の中国での研究によると、看護師の間でペットを飼うことは珍しくなく、実に約17%が家庭でペットを飼っているのだそうです。

 

元論文はこちら→

Jiang H, Mei Y, Wang X, et al. The influence of pet ownership on self-compassion among nurses: a cross-sectional study. PeerJ. 2023;11:e15288. Published 2023 May 3. doi:10.7717/peerj.15288

 

彼らの多くは犬や猫といった身近な動物たちと生活を共にしています。

この研究は特に、ペットの飼育が看護師の「自己共感」に与える影響に焦点を当てています。

「自己共感」とは、自分自身に対して優しく、理解を示し、ストレスや困難な状況においても自己受容の姿勢を持つ能力です。

看護師にとって、この能力は日々のストレスや感情的な負荷に対処する上で非常に重要です。

研究では、ペットを飼うことが、自己共感やマインドフルネスの高さに関連していることが示されました。

では、なぜペットはこんなにも私たちの心に良い影響を与えるのでしょうか?

ペットは無条件の愛と支援を提供し、看護師が仕事で直面するストレスや圧力を和らげる役割を果たしているのかもしれません。

また、ペットとの時間はマインドフルネスを促し、日常の忙しさから一時的に離れる機会を提供しているのでしょう。

この研究はオンライン調査によるもので、特定の看護師グループに限定されているため、結果を一般化することには慎重さが求められます。

しかし、看護師に限らず、私たち一人一人がペットからどのような支援を受けているのか、またそれが私たちの心の健康にどのように影響しているのかを考えるきっかけになるかもしれませんね。

心を癒す、ペットとの深い絆。

この研究は、私たちがペットとの関係を見直し、新たな価値を見出す機会を提供してくれるかもしれませんね。

 

日本におけるCOVID-19ワクチンの影響:2021年のデータに基づく分析

2021年の日本のCOVID-19ワクチン接種の効果を検証する論文が「nature」の「scientific reports」にオープンアクセスで掲載されています。

 

元論文はこちら→

Kayano, T., Ko, Y., Otani, K. et al. Evaluating the COVID-19 vaccination program in Japan, 2021 using the counterfactual reproduction number. Sci Rep 13, 17762 (2023). https://doi.org/10.1038/s41598-023-44942-6

この研究では「もしもワクチン接種がなかったら」という事実とは異なるシナリオを想定することで、2021年のワクチンの有効性を評価することを目的としています。

実際のところ、日本は2021年に全国規模で、ピーク時には1日あたり100万人以上が接種されました。

研究の結果、ワクチン接種がなければ、研究期間中の感染者数と死者数はそれぞれ約6330万人(95%信頼区間 6320万~6360万)と36万4000人(95%信頼区間 36万3000~36万6000)と推定されました。

一方、実際の感染者数と死者数は470万人と1万人でした。

結論として、ワクチンは非常に高い有効性が示され、死亡率を97%以上削減したことになります。

そして、さらにワクチン接種が14日早ければ、実際の数よりも54%の感染者数と48%の死者数を減少させることが可能だったことが推定されています。

 

変化を受け入れること

 

人間は本能的に安定と予測可能性を求める生き物です。

私たちの脳は、環境の一貫性と予測可能性を好み、安定した環境を生存に有利と解釈します。

しかし、変化はこの安定性を脅かし、未知の領域へと私たちを導くので、不安や恐れを引き起こすことになります。

変化は不確実性を伴いますし、私たちはその結果を完全に予測することができません。

人間は、生存本能に直結した形で、未知よりも既知を選ぶ傾向があり、これが変化に対する抵抗の一因となっています。

しかし、現実的に変化は避けられるものではありません。

また、それを受け入れることで、新しい機会を見出し、成長することができます。

変化に対する態度を変えることは、新しい考え方を受け入れることです。

過去の固定観念や慣習に縛られないこと、柔軟な思考で新しいアイデアや方法を受け入れることです。

変化を恐れるのではなく、それを自己成長のための挑戦として捉えることが大切です。

変化に対する積極的な態度は、具体的な行動を伴います。

小さな一歩から始めても良いのです。

重要なのは、変化を生み出すための行動を起こすことです。

新しいことに挑戦し、リスクを取り、間違いから学ぶことが、変化を生み出す鍵となります。

変化は、私たちを成長させる大きな力です。

変化を通じて、私たちは新しい自分を発見し、新しいスキルを習得し、新しい視点を得ることができます。

 

言葉の力:だからこそ避けたい言葉

 

悲しみの時期にある心のケア、それは繊細な作業です。

私たちが悲嘆にくれる人々を支える際には、言葉一つ一つがその人の心にどのように響くかを深く考える必要があります。

CalderwoodとAlbertonによる研究は、悲嘆のプロセスにおいて、特に弔意カードがどのような影響を及ぼすかを明らかにしています。この研究から学ぶべき点を、グリーフケアの観点から探ってみましょう。

 

元論文はこちら→

Calderwood KA, Alberton AM. Consoling the Bereaved: Exploring How Sympathy Cards Influence What People Say [published online ahead of print, 2022 Jan 26]. Omega (Westport). 2022;302228211065958. doi:10.1177/00302228211065958

 

まず、悲嘆に暮れる人々への対応において、「何を言うべきか」よりも「何を言うべきでないか」を理解することが重要です。

この研究によれば、悲嘆にくれる親たちは、かけられた言葉の中にはむしろ傷を深くした言葉があると感じています。

これは、私たちが送った慰めの言葉が、時には無意識のうちに害を与えてしまった可能性があることを示しています。

では、どのような言葉が不適切とされるのでしょうか?

例えば、悲嘆の感情を急かすような言葉や、失った人の記憶を簡単に置き換えようとする言葉です。

具体的には、こんな言葉などがありますね。

「悲嘆の感情を急かす言葉」は

   – 「もう立ち直った?」

   – 「そろそろ忘れる時だよ」

   – 「前に進むべきだね」

   – 「もう時間が経っているから」

これらの言葉は、悲嘆にある人に対し、自分のペースで感情を処理する代わりに、急いで立ち直ることを強いるように聞こえます。

「失った人の記憶を置き換えようとする言葉」とは

   – 「また新しい人生を始めることができる」

   – 「他の人がいるよ」

   – 「あなたにはまだ長い人生がある」

   – 「時間がすべてを癒す」

これらの言葉は、失われた大切な人の存在を軽視し、その記憶を急いで置き換えるように促すように感じられます。

これらの表現は、悲嘆にある人々に対して不適切ですし、彼らの感情や経験を尊重しないと受け取られても仕方がありません。

悲嘆に対する個人の経験は、深く個人的なものであり、そのプロセスを尊重し、共感を持って接することが重要です。

一方で、決して余計な評価をしない支援、つまり、ただ話を聞く、ただ共感を示す、その人の感情をそのまま受け入れるといった行動は、より有益であることが示されています。

弔意カードにおいても、慎重な言葉選びが求められます。

この研究では、悲嘆に関するカードのメッセージが、しばしば愛や記憶を持続させること、平和や快適さを達成することに焦点を当てていることが示されています。

しかし、これらのメッセージが時には「愚か」で「不適切」と受け取られることもあるのです。

悲嘆にある人々にとって、彼らの感情や経験を過小評価するようなメッセージは、かえって心の重荷となってしまいます。

悲嘆にある人々を支えるには、彼らの感情を尊重し、彼らが自らのペースで悲嘆を処理できる環境を提供することが不可欠です。

無理に忘れさせようとするのではなく、存在を認め、共感を示すこと。

これこそが、真のグリーフケアの基盤となります。

悲嘆のプロセスは、個々人によって異なり、それぞれの時間が必要です。

私たちができる最善のことは、そのプロセスを尊重し、必要な支援を提供することです。

 

 

鳥のさえずりの効果

現代社会では、都市化が進む中で、私たちの日々の生活環境は大きく変化しています。

都市の喧騒と自然の静寂、この二つの極端な環境が私たちの精神的健康に与える影響について、面白い研究があります。

具体的には、交通騒音と鳥の鳴き声のサウンドスケープが、心理状態に及ぼす影響を探究したものです。

 

元論文はこちら→

Stobbe, E., Sundermann, J., Ascone, L., & Kühn, S. (2022). Birdsongs alleviate anxiety and paranoia in healthy participants. Scientific Reports, 12(1), 16414.

 

この研究では、録音された鳥の鳴き声と都市の騒音を用いて、それぞれの音が不安、うつ病、妄想症状、そして認知機能に与える影響を評価しました。

295人の参加者が、交通騒音(低多様性、高多様性)と鳥の鳴き声(低多様性、高多様性)の4つの条件のいずれかに6分間さらされました。

鳥の鳴き声は不安や妄想症状を有意に減少させる効果があることが示されました。

一方で、都市の騒音はうつ状態を増加させることがわかりました。

この研究の結果は、私たちの日常生活における環境音の重要性を浮き彫りにしています。

 

ただし、この研究にはいくつかの限界があります。

例えば、参加者の性別の偏りや、サウンドスケープの多様性の操作が完全に成功したわけではないこと、オンラインで行われたため認知タスクの管理が完全ではなかったことなどが挙げられています。

 

心からの感謝の実践

 

私のブログでも、かつて「感謝日記」をとりあげたこともありますし、それでなくても「感謝」の効用については世の中にたくさんあがっています。

ところが、「感謝の実践」はよく誤解されがちで、その結果、効果が薄れたり、さらには害を及ぼすこともあります。

神経科学によれば、「感謝の実践」がその人にとって良い影響を与えるためには、それが真実の体験でなければならないとされています。

ところが、人は、感謝ばかりを感じていられるわけではありません。

感謝どころか、罪悪感や嫌悪感、自分に価値がないと感じること、または心に棘が刺さったような感情がしばしば心を支配するものです。

感謝日記をつけたり、感謝のリストを作成するなどの実践を試してみても、それが意味のあるものと思えなかったり、表面的でうすっぺらに感じられることがあります。

でも、よく考えてみてください。

本当に感じる「感謝の感情」と相反する感情を経験することは、その良さを否定することになるのです。

感謝は、特定の行為に対する感謝だけではなく、世界のどんなものに対しても真摯な感謝を含む気持ちです。

例えば、窓から見える美しい夕日を見た時、心から感動した気持ちは嘘偽りのないものでしょう。

そして、その美しい風景に思わず感謝の気持ちが溢れてきたという経験はないでしょうか。

感謝している人は、一般的にエネルギッシュで、生き生きとしており、積極的で、意欲的で、注意深い傾向があります。

彼らは活力を感じ、うつ病の症状が少なく、自分の人生に対してより良い感じを持っています。

「感謝の実践」は、心理的、社会的、精神的なリソースを活用し、トラウマに直面してもより回復力を発揮します。

ただし、このように真に感じる「感謝の実践」は、孤独感やストレス、不安などに飲み込まれているときには、不可能の極みように感じられることがあります。

感謝を真に体験するためには、「すべき」という考えを捨て、本当に感謝しているものに焦点を当てることが重要です。

感謝を真に感じる方法としては、少ないものや小さいもの、それに対する自分の心がどう動いているのかを観察しやすいものを扱います。

「感謝日記」には、具体的に何に感謝しているかを生き生きと書き、一つか二つのことにだけ焦点を当てるのが良いです。

それは、いくつかの浅い穴を掘るのではなく、一つの深い井戸を掘るようなものです。

このような感謝の練習を通じて、私たちはより多くの感謝の対象を認識する能力を養うことができます。

感謝が「間違った」時、私たちは義務感やうしろめたさ、不当な感情にとらわれがちです。

しかし、本当に感謝できるものに対して心からの経験を持つことができれば、私たちの人生は変わるでしょう。

これが感謝が「正しい」ときといえます。