言葉の力:だからこそ避けたい言葉

 

悲しみの時期にある心のケア、それは繊細な作業です。

私たちが悲嘆にくれる人々を支える際には、言葉一つ一つがその人の心にどのように響くかを深く考える必要があります。

CalderwoodとAlbertonによる研究は、悲嘆のプロセスにおいて、特に弔意カードがどのような影響を及ぼすかを明らかにしています。この研究から学ぶべき点を、グリーフケアの観点から探ってみましょう。

 

元論文はこちら→

Calderwood KA, Alberton AM. Consoling the Bereaved: Exploring How Sympathy Cards Influence What People Say [published online ahead of print, 2022 Jan 26]. Omega (Westport). 2022;302228211065958. doi:10.1177/00302228211065958

 

まず、悲嘆に暮れる人々への対応において、「何を言うべきか」よりも「何を言うべきでないか」を理解することが重要です。

この研究によれば、悲嘆にくれる親たちは、かけられた言葉の中にはむしろ傷を深くした言葉があると感じています。

これは、私たちが送った慰めの言葉が、時には無意識のうちに害を与えてしまった可能性があることを示しています。

では、どのような言葉が不適切とされるのでしょうか?

例えば、悲嘆の感情を急かすような言葉や、失った人の記憶を簡単に置き換えようとする言葉です。

具体的には、こんな言葉などがありますね。

「悲嘆の感情を急かす言葉」は

   – 「もう立ち直った?」

   – 「そろそろ忘れる時だよ」

   – 「前に進むべきだね」

   – 「もう時間が経っているから」

これらの言葉は、悲嘆にある人に対し、自分のペースで感情を処理する代わりに、急いで立ち直ることを強いるように聞こえます。

「失った人の記憶を置き換えようとする言葉」とは

   – 「また新しい人生を始めることができる」

   – 「他の人がいるよ」

   – 「あなたにはまだ長い人生がある」

   – 「時間がすべてを癒す」

これらの言葉は、失われた大切な人の存在を軽視し、その記憶を急いで置き換えるように促すように感じられます。

これらの表現は、悲嘆にある人々に対して不適切ですし、彼らの感情や経験を尊重しないと受け取られても仕方がありません。

悲嘆に対する個人の経験は、深く個人的なものであり、そのプロセスを尊重し、共感を持って接することが重要です。

一方で、決して余計な評価をしない支援、つまり、ただ話を聞く、ただ共感を示す、その人の感情をそのまま受け入れるといった行動は、より有益であることが示されています。

弔意カードにおいても、慎重な言葉選びが求められます。

この研究では、悲嘆に関するカードのメッセージが、しばしば愛や記憶を持続させること、平和や快適さを達成することに焦点を当てていることが示されています。

しかし、これらのメッセージが時には「愚か」で「不適切」と受け取られることもあるのです。

悲嘆にある人々にとって、彼らの感情や経験を過小評価するようなメッセージは、かえって心の重荷となってしまいます。

悲嘆にある人々を支えるには、彼らの感情を尊重し、彼らが自らのペースで悲嘆を処理できる環境を提供することが不可欠です。

無理に忘れさせようとするのではなく、存在を認め、共感を示すこと。

これこそが、真のグリーフケアの基盤となります。

悲嘆のプロセスは、個々人によって異なり、それぞれの時間が必要です。

私たちができる最善のことは、そのプロセスを尊重し、必要な支援を提供することです。