百里を行く者の気構え

以前に「戦国策」からのお話を引用しました。→「恐れの本質

この「戦国策」は、思わず唸ってしまう説話にあふれていますが、その中に

百里を行く者は九十を半ばとす

という言葉があります。

 

文字通り、百里を旅する者は九十里をもって半分の行程だと心得なさいというものです。

 

最後の詰めこそが大切であると教えた言葉ですね。

 

長く辛い道のりを歩き通して、やっとゴールが見えてきた。心の中は喜びに満ちるでしょうし、安心もするでしょう。

その時にこそ、なお半分の距離を歩き直しても良いぐらいの覚悟を持ちなさいということです。

 

 

考えてみれば、人間って人生をよりよく生きようとするならばゴールを設定しない方が良い生き物なのかも知れませんね。

 

ドラッカーは「どれが最高の作品か」という質問に対して、常に「次の作品」というのが変わらぬ答えだったと言います。

その時、ドラッカーは19世紀の作曲家ヴエルディの言葉を引用しました。ヴェルディは年老いてもなお挑戦を続け、80歳になって最後のオペラを書いた方だそうです。

 

「人間だけが失敗から学ぶことができる。私は多くの失敗をしてきた。したがって、私は努力を続けなくてはいけない」

百里を行く者の九十里。それはまだ半ば。

 

私も、常に歩き続ける努力を惜しまない人になりたいものです。

 

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いつでもその人にとっては「ふたつにひとつ」ということ

ほぼ日刊イトイ新聞の糸井重里さんの「今日のダーリン」のコラムは、なるほどと感心し、共感することも多いです。

ちなみに、「今日のダーリン」はバックナンバーを残さない方針ということで、「毎日、更新されて、毎日、消えていくコンテンツ」です。

ですので、文章を引用・転載することは控えますが、4月30日の「今日のダーリン」は「そうだよなあ」と感心しましたので、内容をお伝えしますね。

 

サイコロの目や野球の打率など、それが「当たる確率」というのは数学的に導き出せるものです。

例えば、サイコロで3が出る確率は6分の1。打率は、安打数÷打数です。

けれども、サイコロを振る当事者だったり、その打席でバッターを観ている人にとっては、確率うんぬんより

「当たるか、外れるか」

の「ふたつにひとつ」なのだということを、言っていました。

 

「なるほど」と思って感心したのは、これは私たち医師の日常でよく経験することだからです。

ある患者さんに、新しい薬を処方するとします。その方にとっては初めての薬ですので、「こんな副作用がありますから、気を付けてください。」と説明します。

「この薬は1%未満に浮腫みが出ることが知られています。症状が出たら、すぐに知らせてくださいね。」

「5%近くの方が便秘するそうです。」とか。

説明していて、この「1%未満」とか「5%近く」という数字は、患者さんにとっては意味がないんじゃないかと思うことがあります。

もちろん、医療者は知っておく必要があります。あまりに大きい数字は「注意すべき薬剤」として認識していた方が安全だからです。

ただ、副作用として症状が出るか出ないかは、当事者であるその患者さんにはヒトサマの統計など実はあまり意味がないことで、あくまでもその患者さんにとって副作用が出たか出ないかが問題なんですね。

背景となる統計は、当事者の「ふたつにひとつ」の前では説得力がうすくなる気がします。

だから、注意しなければならないのは、現に表れている症状には数字の説明は時に不誠実であるということです。

 

そして、この「ふたつにひとつ」のことばかり気にしていると、新しい薬は怖くて出せなくなります。

そもそも何のための薬か、十分な共通理解が必要です。

「ふたつにひとつ」を他人まかせにしないためにも。

 

on hill

 

スフィンクスの謎 ギリシア神話から

「スフィンクス」 と言えば、ギザの大スフィンクスを思い浮かべる方が多いでしょう。

けれども、ギリシアのスフィンクスは、エジプトのスフィンクスとだいぶ異なっています。
Great Sphinx of Giza - 20080716a

スフィンクスが登場するのは、三大悲劇詩人ソフォクレスの代表作「オイディプス王」。

アホロドーロスの「ギリシア神話」には、スフィンクスに関する描写がこうあります。

「これは女面にして胸と足と尾は獅子、鳥の羽を持っていた。」

ギザの大スフィンクスと違って、ギリシア神話の妖獣スフィンクスは女性なのです。

はっきりとした乳房を持ち、背中には羽を生やしています。

Gustave Moreau 005

乳房に象徴される母性と、獅子に象徴される獣性の二面性の属性が強調された妖獣です。

もともとスフィンクスは男色の罪を犯したテバイの王、ライオスを罰するために、ゼウスの妻ヘラによって送られた刺客でした。

実は、スフィンクスという言葉は「絞め殺す」という意味を持っていたのです。

テバイでは、スフィンクスが通りかかった者たちに謎かけをし、それが解けないと食べてしまうという災いが続いていました。

オイディプスはスフィンクスに対峙して、あの有名な謎かけを解き明かします。

 

謎とはこうです。

「朝は4本足、昼間は2本足、晩に3本足で歩くものはなにか」

オイディプスは「人間」であると即答します。「なぜなら、赤児の頃には4本足で這って歩き、成人では2本足になり、老年になってからは杖を第三の足に加えるから」

 

実は、この謎は次のようだったという説もあります。

「一つの声を持ち、二つ足にして四つ足にして三つ足なるものが、地上にいる。」

「それが最も多くの足に支えられて歩くとき、その肢体の力は最も弱く、その速さは最も遅い。」

つまり、同時に2本足でも3本足でも4本足でもあるものは何か?というものです。

 

そして、その答えは「人間」ではなく、なんと「オイディプス自身」でした。

なぜならば、オイディプスは生後すぐに踵をピンで貫かれ山奥に捨てられました。そして、ピンを抜かれ、2本足の人間に成長しましたが、足は腫れたままでした。(オイディプスという名称は「腫れ足」という意味)

さらに、知らぬこととは言え、彼は父親を殺し、母親と交わって子を得るという数奇な運命をたどることになります。(獣同然の行為=4本足)

彼は王になった後に自分の犯した罪を知ることとなり、自ら目をつぶしてしまいます。(杖を必要とする=3本足)

 

下の絵は、スフィンクスに対して自分自身を指さしているオイディプスです。

 
Jean Auguste Dominique Ingres - Oedipus and the Sphynx - WGA11843
  

台風通過後の外来診療について

台風6号(NOUL)の進行速度が速まっているようです。

NOUL 20150512

今日のお昼前には公共交通機関も運行可能になるかも知れません。

午後2時前までに運行再開になれば、午後の外来診療は再開する予定です。

 

沖縄本島にも早々と暴風警報が発令されましたが、午前2時現在、まだ嵐の前の静けさという感じです。

オーバーナイト透析の患者さんたちも、安全のために台風の接近前に今日は早めに終了して帰宅してもらいました。

 

被害がないようにと祈るばかりです。

 

 

追記:(午前10時記載)

 

午前7時59分には暴風警報も解除されたようです。

bofukeiho

 

一般社団法人沖縄県バス協会のホームページによると、午前11時発の便より順次再開する予定のようです。

クリニックの外来診療は、午前は休診午後から通常通り診療いたします。

ご協力をよろしくお願いいたします。

 

 

台風6号接近に伴う診療についてのお知らせ

台風6号(NOUL)が沖縄地方に接近しています。

今現在は「非常に強い台風」に位置付けられている勢力で、沖縄に近づいても中心付近の最大風速が40m/sと予想されています。

 

十分な注意が必要ですね。

被害が大きくならないようにと祈るばかりです。

 

さて、さくだ内科クリニックの台風時の診療についてのお知らせです。

 

【外来診療について】

外来の診療は、沖縄の各機関と同様に、公共交通機関の運行状況で決定します。

交通機関が運行停止となった場合は、外来診療は休診となります。

 

随時、テレビやラジオの情報やインターネットでご確認をお願いします。

 

一般社団法人沖縄県バス協会のホームページ

路線バスの運行情報→本島・離島があります。

 

沖縄県バス協会

 

そこでチェックするとより確かかと思います。

またモノレールの情報はこちらです。

ゆいレール

 

 

【透析について】

 

透析も外来診療に準じますが、単に中止とするわけにはいきません。

より密な連絡が必要になってきます。

 

今回の場合、火曜日に最接近することが予想されていますので、すでに火曜日の透析を月曜日に繰り上げる決定をいたしました。

今後も予定の調整が必要となってくると思われます。

透析室からの連絡をお待ちください。

 

 

時代と容姿年齢

テレビアニメのサザエさんがスタートしたのが1969年ということですから、もう45年以上も前からあのキャラクターは変わっていないのですね。

もっと正確を期するならば、原作は昭和21年(1946年)とのことですから、もうほとんど70年前のスタートです。(改めてすごい!)

いろいろなところで登場人物の年齢設定が話題になりますから、すでにご存知の方も多いでしょう。

サザエさんが24歳、マスオさんが28歳。

そして、よく問題になるのが、お父さんこと磯野波平の年齢です。

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70歳?いえいえ、ちゃんと会社に出勤していますね。まだまだ現役です。54歳とのことです。

原作の時代、70年前の54歳のイメージは、この波平像だったのでしょうか?

現代の容姿年齢に20歳近い差がある気がします。

 

そして、この人。原作は昭和43年(1968年)にスタートしました。

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「あしたのジョー」の丹下段平。

約47年前のイメージととらえて良いのでしょうか? 45歳なのだそうです。

私より年下であるということが、信じられません。

 

アニメだから実年齢と差が出てくるのかと思ったら、そうでもなくて、ちゃんと容姿と年齢が一致している方もいます。

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「アルプスの少女 ハイジ」のおじいさん。70歳。

 

アニメではありませんが、この人(?)も年齢がわかりにくいですね。

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コペンハーゲンの人魚姫の像です。15歳説があるそうですね。

 

ひまわり8号の画像

気象庁は4月中旬に、平成26年10月に打ち上げられた「ひまわり8号」のサンプル画像を公開しました。

ひまわり7号に比べて格段に観測機能があがったため、鳥肌が立つぐらいの美しい画像です。

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観測する画像のバンド数も、7号の5チャンネルから16チャンネルに増えたそうです。

またカラー撮影も可能となり、解像度は2倍になりました。しかも、観測間隔が30分ごとから2分半ごとになったということで、台風の動きや火山の噴煙の行方を詳しく追跡することができるようになりました。

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この地球の自転の様子は左が7号、右が8号の画像です。海面に反射した太陽の光がすごくリアルですね。

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気象庁のサイトで公開されていますので、オリジナルの画像はそこでご覧ください。

参考程度にブログ用にサイズを小さくしたので、オリジナルはもっときれいですよ。

台風6号 NOUL

すっかり油断をしていました。

来週の12日あたりには、台風6号「NOUL」(北朝鮮の言葉で“夕焼け”という意味)が先島諸島にも影響を与えそうです。

 

昨日の気象庁の発表を見ましたが、びっくりするのはその勢力です。

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5月7日時点で、中心気圧が 955hPa 。最大瞬間風速も 60m/s という大きさです。フィリピンの近海はどれだけの海水温なのでしょう。

 

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5日間の予想進路図はどうなっているかと拾ってきました。右に曲がった後は八重山、宮古をなぞって沖縄本島に一直線の予報です。

noul0508

 

ちなみに米軍の予想進路図も並べてみます。

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やはり、気象庁も米軍もそう大きな予想の違いはなさそうです。

 

なくとも気持ちの面では台風の備えのないタイミングでした。早めの台風対策を心掛けなければなりません。

今後も台風情報に注意を向けましょう。

 

 

「Big Fish」

2015年度の琉大ミュージカルの演目が 「 Big Fish 」 とのこと。

開演は8月2日(日)。会場が沖縄市民会館大ホール とのことです。(ナニゲに宣伝協力してます(笑))

 

「 Big Fish 」というのは、「チャーリーとチョコレート工場」で知られるティム・バートン監督の代表作ですね。

父親と息子との絆(再結)をテーマにした、ファンタジー映画です。父親の若き日の回想シーンと、息子と対峙した病床にある現実のシーンが対称的で、非常に印象の深い作品です。

 

ホラ話で多くの人を楽しませていた父親に対し、本当の父親が理解できずに葛藤する息子。

虚構の世界に埋もれてしまって、父親の本心さえも信じられなくなった息子が、父親が病床に伏したことをきっかけに、父親のホラ話の登場人物に会いに行きます。

そして、まったくのホラ話だと思っていたことが、実はそうではなかったことがわかったのでした。

父親がこの世を去る時、息子は深く父親を理解し、愛していたことを実感します。

とにかく、ラストのシーンが感動的な映画です。

 

 

さて、琉大ミュージカルの皆さんは、例えばあの巨人さんをどうやって演じるのでしょう?

ほかにも見どころが尽きない作品です。

今から楽しみですね。

 

夏日と真夏日

夏日というのは1日の最高気温が25℃以上となる日のこと。

真夏日は30℃以上、猛暑日は35℃以上になる日のことを言うそうですね。

5月に入って那覇では25℃以上の夏日が続いているようです。

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以前にも熱中症予防対策に暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)の活用をおすすめしました。

暑さ指数は、気温に加えて、湿度と日射・輻射など周辺の熱環境の三つを取り入れた指標です。

特に湿度などは人体に与える影響が大きいですものね。

下の図は日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針」から引用したものです。

気温が25℃以上だと、湿度75%で警戒レベルに達しているのがわかります。

WBGT

特にこの時期は、人の体は熱さに順応していませんから、通常よりも注意しなければなりません。甘くみてはいけない時期です。

特に水分の補給には注意を払いたいものです。

「日常生活における熱中症予防指針」には、こう記載されています。

 

1)日常生活における水分補給:通常の生活では食事等に含まれる水分を除いた飲料として摂取すべき量は1日あたり1.2リットルを目安とする。

2)運動時や作業時の補給:水分の補給量は体重減少量の7~8割程度が目安となる。体重の2%以上の脱水を起こさないよう注意する。大量の発汗がある場合は、スポーツ飲料などの塩分濃度0.2%程度の水分を摂取する。

作業前:コップ1~2杯程度の水分・塩分を補給する(コップ一杯200ml)。

作業中:コップ半分~1杯程度の水分・塩分を20~30分ごとに補給する。

作業後:30分以内に水分・塩分を補給する。

 

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