今日は私の反省を踏まえたお話です。(ご紹介するにあたって内容を少し変えています。)
Aさんは、足のむくみで受診されました。
「2週間ほど前から、むこうずねを押すとへこんだままになるし、靴がきつくなって痛い」という症状です。
医療者は、このむくみを「浮腫」と表現します。
一般的には皮下に水分が貯留した皮下浮腫のことです。
浮腫は、その原因を探る上で、浮腫を引き起こす病態を考えていく必要があります。
大切なポイントは、浮腫の場所が全身にわたっているのか、一部に限局したものなのかを見分けることです。
全身性浮腫の場合、心疾患、腎疾患、肝疾患、内分泌疾患、栄養障害、薬剤性、特発性などがあります。
下肢に限局した浮腫の場合は、リンパ性浮腫や静脈弁不全からの静脈性浮腫などがあります。
全身に影響を及ぼす心臓や腎臓、肝臓などに病気があった場合の浮腫は、緊急の処置を要します。
その見極めが重要です。ですから、必要ならば胸部レントゲン写真をとり、腹水の有無を調べるために腹部エコー検査をし、採血検査や尿検査をします。
(幸いに異常はなさそうだ。よかった。)
そこで、安易に医者の頭の中で問題のすり替えが起きてしまうのです。
患者さんはむくみを何とかして欲しいということで受診しています。
医者は浮腫の鑑別に熱心に取り組み、異常がなさそうだということで安堵しています。
ここで患者と医者の間にギャップが生じてしまっているのです。
ここで鑑別しなければならない病態のひとつひとつや検査の意味を説明していれば、問題は少ないと思います。
けれども、説明が不十分なままに話が進んでしまうと、患者と医者の間のギャップはさらに広がってしまいます。
多忙な日常では難しいこともあるのですが、最低限に心がけていかなければならないことなのだと思います。(申し訳ないことに、何度かそのギャップを埋められなかった経験をしています。)