「フロスト気質」

 

ジャンルとしては、いわゆる警察小説です。

 

表題にもある、イギリスのデントン警察署のジャック・フロスト警部が、このシリーズの主人公。

 

 フロスト気質 R・D・ウィングフィールド著、 芹澤 恵訳

 

以前からランキング企画もので上位を賑わす人気シリーズで、そのタイトルを目にしていたのですが、今回読むのは初めてでした。

 

メインの事件を忘れてしまうほどの、事件につぐ事件の連続です。

 

警察署が舞台で、次々と発生する事件に対応するしかないというのは、確かにリアルといえばリアルなんでしょうね。

 

ゴミに埋もれた少年の死体の遺棄事件。連続幼児刺傷犯の新たな犯罪。15歳の少女の誘拐事件…。そして、メインである身代金要求の少年誘拐事件。

 

これでもか、これでもかという風にフロスト警部に事件の数々が襲い掛かってくるのです。

 

フロスト警部は、寝食を忘れ、文字通り雨にずぶ濡れになり泥水にまみれながら、それこそ不眠不休で事件にあたります。

 

この「次から次」「さらに次から次」「まだまだ次から次」という状況は、個人的に救急病院勤務時代を思い出して、身につまされる思いでした。

 

休もうとすると、緊急の要件を告げる電話が鳴るのです。

 

下ネタのジョークを連発し、ヘビースモーカーで、直観型で忍耐力が取り柄の人情味あふれる警部です。

 

ジャック・フロスト警部の境遇と比べると、ちょっとやそっとのことで、泣き言をいうもんじゃないという気になってきました。

 

「ツイていない」状況の中で、彼は持ち前のキャラクターで、難関を耐え抜いていきます。

 

例えば、こんな言葉で。

 

「…だけど、今さらないものねだりをしてみたとこで叶うわけじゃなし、だったらありったけで踏ん張るしかないだろう?」

 

それから、こうも。

 

「…つまり、空振りということだった。だが、思わしくない結果が出たとき、それについて思い悩んでなんになる?次に打つべき手を考えればいいだけのことではないか。」

 

事件はつぎつぎ起こり、特にメインの事件は「くそがつくほどの」難事件なのですが、終盤には、それぞれの事件が見事に回収されていきます。

 

そして、メインの事件は、やっと「はずれ」の連続を脱し、クライマックスを迎えて勝利をおさめます。

 

スマートな推理小説ではありませんし、ダークなハードボイルドでもありませんが、フロスト警部の魅力全開の作品でした。

 

シリーズで出ていますから、別の作品も読んでみたいと思います。

 

 

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