「自分自身に」

詩人の言葉は、「人の心には共通の通奏低音が流れているのだ」と、静かに諭してくれます。

私だけが感じる寂しさや悲しさ、そして恥ずかしささえも、実はそうではないんだよ、みんなだよと教えてくれます。

吉野弘さんの詩には、そんなところがあります。

「自分自身に」という詩は、特にそうです。そして、「気恥ずかし」いけれど、「まだひらく花」だと思う後押しをしてもらいました。

 

自分自身に

 

他人を励ますことはできても

自分を励ますことは難しい

だから―――というべきか

しかし―――というべきか

自分がまだひらく花だと

思える間はそう思うがいい

すこしの気恥ずかしさに耐え

すこしの無理をしてでも

淡い賑やかさのなかに

自分を遊ばせておくがいい

 

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