「ペンローズの階段」をご存知でしょうか?
名前は知らなくても、この階段の絵は見たことはあるでしょうね。
上がっても上がっても(もしくは下っても下っても)終わりがない階段です。
下の三角形と同様、「不可能図形」として知られています。実はこの三角形も「ペンローズの三角形」というのです。
これらの名前に出てくるペンローズは、イギリスの遺伝学者ライオネル・S・ペンローズと息子の数学者ロジャー・ペンローズのことで、二人は「ペンローズの三角形」を1954年に心理学の論文として発表したそうです。
トリック・アートで有名なオランダの画家エッシャーもこの階段に触発されて「上り下り」という絵を発表しています。
さて、ここからが長い余談です。
医療者に「ペンローズ」と言ったら、まず「ペンローズドレーン」のことを真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか。
「ドレーン」というのは、体の中に溜まった液体を外に排出することです。
浸出液や膿などの液体が体内に貯留すると、感染の原因になったりするので、管状、あるいは紐状の医療材料をつかって貯留物を体外に排出します。
例えば、お腹の手術で術創を縫合しても、上記のような理由でドレーンはしばらく置いておくことが多いのです。
ドレーンはその用途によって、それぞれに工夫が施されており、「ペンローズドレーン」はその中のひとつというわけです。
(レジデント 基本臨床手技 寺島裕夫先生 「ドレーンチューブ類の管理」から引用)
「ペンローズドレーン」は、毛細管現象を利用して排液するもので、柔らかく、少々粘度の高い液体では詰まりやすいという欠点はあるものの、非常に使い勝手があるドレーンです。
少なくとも「ペンローズ」と言って、「階段」や「三角形」を連想する医療者はいないですよね(笑)。