今年の3月に、日本老年医学会が「高齢者に対する適切な医療提供の指針」を発表しました。
この指針は、医療従事者が高齢患者に対して適切な医療提供を行えるよう支援することを目的として作成されたものです。
確かに、高齢患者さんの診療は難しいものです。その一つには、若い人に比べると予備力に乏しいことがあげられます。
この指針にも触れられていますが、若い人では一過性ですむことが、高齢者では一度落ちてしまうとなかなか元に戻らないことが多く、そうならないように、予防したり機能を保持するという視点が大切になってきます。
簡潔に基本的な要点をならべた指針ですので、非常に読みやすい構成になっています。
以下にその要件を並べてみますね。
1 .「高齢者の多病と多様性」 |
・高齢者の病態と生活機能、生活環境をすべて把握する。 |
2 .「QOL維持・向上を目指したケア」 |
・生活機能の保持、症状緩和などによりQOLの維持・向上を目指す。 |
3 .「生活の場に則した医療提供」 |
・患者のQOL維持に生活の場の問題は重要であり、適切な医療提供の場を選択する |
・医療提供の場を変更する際に生じる問題を理解し、予防に努める |
4 .「高齢者に対する薬物療法の基本的な考え方」 |
・有害事象や服薬管理、優先順位に配慮した薬物療法を理解し、実践する。 |
5 .「患者の意思決定を支援」 |
・意思決定支援の重要性を理解し、医療提供の方針に関して合意形成に努める。 |
6 .「家族などの介護者もケアの対象に」 |
・家族をはじめとした介護者の負担を理解し、早期に適切な介入を行う。 |
7 .「患者本人の視点に立ったチーム医療」 |
・ 患者もチームの一員であることを理解し、患者本人の視点に立った多職種協働によるチーム医療を行う。 |
ひとつひとつの項目がどれも大切ですし、これは「高齢者」に限ったことではなく、全ての年齢層に通じることなのでしょうね。