茨木のり子さんの詩を、時々読んで警策をいただきます。
うじうじとした気持ちに、背筋がしゃんと伸びた「はっきり言ってくれる言葉」の詩だからです。
生きていらしたら、今の世の中でどんな言葉を発していただけたでしょう。
例えば、次の詩。
灯
人の身の上に起ることは
我が身にも起りうること
よその国に吹き荒れる嵐は
この国にも吹き荒れるかもしれないもの
けれど想像力はちっぽけなもので
なかなか遠くまで羽ばたいてはゆけない
みんなと違う考えを持っている
ただそれだけのことで拘束され
誰にも知られず誰にも見えないところで
問答無用に倒されてゆくのはどんな思いだろう
もしも私が そんな目にあったとき
おそろしい暗黒と絶望のなかで
どこか遠くにかすかにまたたく灯が見えたら
それが少しずつ近づいてくるように見えたら
どんなにうれしくみつめるだろう
たとえそれが小さな小さな灯であっても
よしんば
目をつむってしまったあとであっても