先月の医学誌に「栄養ドリンク飲用のリスクと有害作用」というタイトルの文献が出ていました。
どんな背景があって、どういう意図で注意喚起されているのか分からなかったので
「まあ、飲みすぎはどんなものでも良くないだろうし、そういうこともあるんだね」
とさしあたって問題とも思っていなかったのですが。
何気なく調べてみると、意外に身近な問題なのかも知れないと思い直しました。
日本でも他人事ではない(?)話。
カフェインが含まれているエナジードリンクとアルコールのカクテル
具体的には、Red Bullというエナジードリンクとアルコールのカクテルのようです。
最もポピュラーなレッドブル・カクテルは、レッドブルとウォッカを混ぜたもので
「ウォッカ・レッズ」「ブルショット」などと呼ばれているようです。
また、テキーラ、赤ワイン、ラム、日本酒などとミックスするカクテルもあるそうです。
それらのリスクについて注意喚起されているわけです。
Red Bullと言えばコンビニでも並んでいる商品ですし、どういうことなのか紹介したいと思います。
その前に、調べてみて、初めて知ったこと。
Red BullについてWikipediaで調べてみると面白いことが分かりました。
Red Bullの歴史から。
オーストリア人のマテシッツという人が、ビジネスで日本に来た時に、日本の栄養ドリンクの市場に目を奪われたそうです。
当時、栄養ドリンクなどというものはヨーロッパにはなく、そこで彼はヨーロッパ人に受けそうなドリンクをつくろうと考えました。
Red Bullの前身が、タイでつくられた「Krating Daeng」(どう発音するのかわかりません。タイ語で、「赤いガウル」という意味。ガウルはウシ亜科の動物。)という飲み物。
タイでシェアを独占していたのが、実は日本のリポビタンD。
それに対抗するためにつくられたそうですが、シェアを伸ばすことはできなかったそうです。
1984年にマテシッツが「Krating Daeng」に出会い国際的な販売権を獲得。
商品開発に当たっては、やはり特に日本のリポビタンDから大きな影響を受けていて、その成分が参考にされました。
1987年にオーストリアで発売されると、マテシッツの思惑通り人気商品となりました。
あっと言う間にヨーロッパ中に広まって、今では世界160か国以上で販売され、売上げ、シェアともエナジードリンクとして世界1位だそうです。
さて、アメリカの医学誌JAMAに次のような文献がありました。
栄養ドリンク飲用のリスクと有害作用
Risk and Adverse Effects of Energy Drink Consumption
Kent A. Sepkowitz, MD
アメリカでは、カフェイン含有の栄養ドリンク(energy drink)の消費量は
2005年には23億本でしたが、2010年には60億本となっています。
10代、若い成人の3分の1から2分の1が日常的に飲用するという報告があります。
また海外に派遣されたアメリカ軍人の半数近くが毎日飲用すると報告しています。
このような栄養ドリンクの一般的なカフェイン含有量は80~140mg。
なかには、250mgのカフェインを含むものもあります。
これらは栄養補助食品として市販されていて、ほとんどの規制の適用外とされているのが現状です。
スウェーデンの研究者らが調べたところによると、カフェイン中毒症 (血中濃度>80μg/mL)に関連した死亡が20件あることがわかりました。
致死量のカフェイン3g (血中濃度80μg/mLに相当) というのは、高カフェイン含有飲料を数時間以内に約12本飲めば達成できてしまう量なのです。
これらの飲み物で特に心配されるのは
市販のプレミックス飲料(Four Lokoなど)や
栄養ドリンクを使用したカクテル(Red Bullとウォッカなど)
など、アルコールと混ぜ合わせて飲むことです。
混ぜ合わせることによって中毒作用が和らぐと信じられているのですが
実際には、要するに認知能力を低下させ
大量飲酒を助長させているのかも知れません。
栄養ドリンクとアルコールを一緒に飲むことは
性的暴力行為の加害または被害
飲酒運転または飲酒運転車両への同乗
アルコール関連の自動車事故のリスクが伴ってきます。
それが、混合飲料そのものの作用によるものか、
混合飲料を飲む人々の性格とリスクを冒そうとする行動によるものかは、不明ではありますが。
アメリカの多くの州では、市販のプレミックス飲料の販売を禁止しているとのことでした。
ちなみに、リポビタンD 1本100ml あたり 無水カフェイン50mgが入っています。
さらに言うと、1杯のコーヒーに含まれるカフェインは約100mgで、血中濃度は1~2μg/mLになります。