今年も透析医学会学術総会の分厚い抄録集が届きました。
学会に申請すれば、抄録集の配布はストップされるシステムなのですが、私はずっとこの形での抄録集配布を希望しています。
いろいろな書籍が電子化されていくのが時代の流れですが、いまだにこの形態を好んでいるのは理由があります。
もちろん、学会に参加する際にはこの嵩張りは筋トレの道具や枕にはなっても、実際的ではないので、iPadのアプリを使うようにしています。
紙媒体の抄録集が良い理由。
まず、「全体を見通す」ことができること。
年に一度の学術総会です。学会の概観をとらえるには、多少分厚くてもぱらぱらとめくる冊子の方が良いのです。
全体像を見るには、この形態が適していると思います。
それから、「変化の状況を理解すること」
今、世の中がどのように動いているのか。それに対して学会がどう変化しようとしているのか。
一昨年、昨年の抄録集と並べて眺めてみると、変化の経緯を理解することができます。
「傾向を予測すること」
私たちは技術職の一面も持っています。技術開発の最前線で、新しい技術がどのように生かされているのかを知ることは、ある程度の未来の技術のあり方を予測することができます。
また、高齢社会への突入は、医療のあり方の意味合いを考えることになりました。
災害対策、感染予防なども普遍的ですが、表立って活発に議論されるようになりました。
「問題を再構成すること」
医療は慣例や慣習にしばられやすい体質を持っています。業務を改善するには、今まで慣れ親しんできた方法を捨てて、新しい方法を再構成しなくてはなりません。
広く行われている慣習に疑問を持つことは、とても重要なことです。
抄録集には、各施設の「問題の再構成」がちりばめられています。
「目的を取り戻すこと」
私たちクリニックの目的を再設定するヒントが、この抄録集にはたくさんあります。
社会の現状やニーズ、それに対する学会の対応や姿勢、そしてそれらの問題をいちはやく察知し、実際に世の中の潮流に応えている医療機関の存在を知ることができます。
達成目標のモデルがごろごろしているのです。
学会に参加し勉強する意義は、この「目的の再設定」に集約されるのかも知れませんね。