先人たちの「酒は飲むもの飲まるるな」とのありがたい言葉が示すように、いくつになってもお酒の適量というものが難しい。
多くの人々が、日々の多忙をねぎらうために、リラックスする手段としてアルコールを口にします。
一杯のビールなどは、一日の終わりに心地よい安らぎを与えてくれるかもしれません。
しかし、アルコール消費の習慣には、心と体に対する長期的な影響が伴います。
特に、「適量でない」飲酒習慣は、心血管疾患などの深刻なリスクを高めることが知られています。
毎年、健診のたびに、保健師さんから「節酒しましょう。休肝日をつくりましょう。」と耳が痛くなるほど諭されている方も多いと思います。
今回、紹介する研究は、「お酒を控えろというけれど、今さら減らして良いことあるの?」という疑問に答えるものです。
つまり、心を入れ替えてお酒を減らした人は、果たして健康を取り戻せるのか?というテーマです。
この研究は、アルコール大量消費の習慣をもつ21,011人を追跡し、アルコール量を減らした後に、主要な心血管イベント(MACE)に対してどう影響するかを調査しました。
ここで言う主要な心血管イベントとは、心筋梗塞や狭心症、入院を伴う脳卒中、そしてあらゆる死亡を指します。
研究者たちは、2005年から2008年の間に最初の健康診断を受け、その後2009年から2012年にかけて2度目の健康診断を受けた人々のデータを用いました。
そして、2回目の健康診断期間中のアルコール消費量の変化に基づいて、参加者を継続的に重度の飲酒を続けるグループと、飲酒量を減らしたグループに分けました。
結果は、飲酒量を減らしたグループでは、継続して重度の飲酒を続けるグループに比べて、主要な心血管イベントの発生率が有意に低いことが示されました。
この発見は、様々なサブグループの参加者においても一貫して観察され、アルコール摂取量を減らすことの心血管疾患予防における可能性を示されました。
この研究の重要性は、医療関係者だけに限ったものではありません。
しかし、研究には限界もあります。
アルコール摂取量は参加者自身の報告に基づいていて、個々人のアルコール代謝の違いや死因の詳細など、不足している情報もあります。
しかし、それでも、はっきりしているのは、保健指導の時に言われたのは、やっぱり正しかったということですね。
この研究から得られる教訓は、健康的なライフスタイルを追求する上で、アルコール摂取は慎重に管理する必要があるということです。
そして、多くの場合と同じように「取り組みが今からでも、遅いということはない」ということですね。
元論文:
Kang DO, Lee DI, Roh SY, et al. Reduced Alcohol Consumption and Major Adverse Cardiovascular Events Among Individuals With Previously High Alcohol Consumption. JAMA Netw Open. 2024;7(3):e244013. Published 2024 Mar 4. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.4013
