世の中には、様々な「ガイドライン」で溢れています。
そして、多くの人々がそれを重要であると感じています。
例えば、最近ではCOVID-19パンデミックのような危機的状況で、これらのガイドラインが人々の健康を保護し、安全を確保するための重要な手段となりました。
ガイドラインは医療専門家によって作成され、科学的根拠に基づいているため、信頼性が高いと考えられています。
また、健康維持や病気の予防に関する明確な指針を提供し、一般の人々にとって理解しやすい形で情報が提供されることも、評価されています。
一方で、これらのガイドラインに対する批判的な意見もあります。
例えば、ガイドラインが頻繁に更新されるため、一般の人々が最新の情報に追いつくことが難しいという問題があります。
常にアップデートしていないと、知らないうちに検査の目標値が変わっていたり、治療薬の選択の優先度が変わっていたりというのは、よく経験することです。
また、ガイドラインがあまりにも専門的で、日常生活に適用するのが難しいと感じる人もいます。
さらに、異なる国や地域で異なるガイドラインが存在することが、混乱を招くこともあります。
加えて、ガイドラインはしばしば平均的な健康状態に基づいて作成されているため、個々の健康状態やニーズに完全には対応していないという指摘もあります。
今回とりあげる「身体活動ガイドライン」についても、これらの問題を念頭に置きながら、吟味しなければなりません。
この「身体活動ガイドライン」によると、成人に推奨される週間運動量は、中強度の有酸素運動で150から300分、または高強度の場合は75から150分とされています。
この「中強度」と「高強度」とは、具体的に何を意味するのでしょうか。
中強度の運動とは、例えば速歩きや軽いジョギングなど、心拍数と呼吸が上がる活動を指します。
一方、高強度の運動とは、もっと体に負荷をかけるもの。階段の上り下りや速いサイクリングがそれに当たります。
これらの運動をどのように日常に取り入れるかというのが、常に問題になりますね。
やはり、一番身近で簡単なのは「歩く」ことでしょう。
朝の通勤時に5分間の「歩き」を取り入れるだけで、週の目標達成に大きく前進します。
更に、自動車を使わずに歩いて買い物に行ったり、庭仕事をしたりすることも、中強度の活動として計算されます。
さて、高強度の運動を取り入れるにはどうすれば良いでしょう。
ヒントは「階段を利用すること」です。
高強度の運動というのは、具体的には、エレベーターを使わず階段を使う、自転車での移動を速めにする、ダンスで思い切り体を動かすなどです。
これらの活動は、中強度のものよりも時間を半分に短縮して同じ効果が得られます。
最後に、週に2日以上の筋力トレーニングも重要です。
体の主要な筋肉群を鍛えることが、健康維持に効果的です。
運動は、小さな一歩から始め、徐々に強度を上げていくことです。
週に150~300分(1日に約20~40分相当)の「歩き」を取り入れてみませんか?
元論文:
Piercy KL, Troiano RP, Ballard RM, Carlson SA, Fulton JE, Galuska DA, George SM, Olson RD. The Physical Activity Guidelines for Americans. JAMA. 2018 Nov 20;320(19):2020-2028. doi: 10.1001/jama.2018.14854. PMID: 30418471; PMCID: PMC9582631.