認知症リスクの指標としての血圧変動性(BPV)と心拍数変動性(HRV)

 

心臓と脳の関係は、とても重要です。

心臓の働きが脳の健康にどのように影響を与えるかを明らかにしようとした研究があります。

認知症リスクの指標として血圧変動性(BPV)と心拍数変動性(HRV)についての研究です。

血圧変動性 (BPV) と心拍数変動性 (HRV) は、どちらも心臓と血管の健康を表す指標ですが、見ているポイントが少し違います。

血圧変動性 (BPV)は、血圧がどれだけ上下に動くかを表します。

血圧は常に変動していますが、健康な人は比較的安定していて、大きな上下動はありません。

逆に、血圧が大きく上がったり下がったりする人は、BPVが高いと言えます。

BPVが高いと、動脈硬化や心臓・血管の負担が大きくなり、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高くなる可能性があります。

心拍数変動性 (HRV)は、心拍の間隔がどれだけ変動するかを表します。

心臓は自律神経の働きで心拍を調節していますが、健康な人は自律神経のバランスが取れていて、心拍の間隔も変動しています。

逆に、自律神経が乱れている人は、心拍が一定になりすぎて変動が少なくなったり、バラバラになったりします。

HRVが低いと、自律神経の乱れを反映し、こちらも動脈硬化や心臓・血管の負担が大きくなり、リスクが高くなる可能性があります。

簡単に言うと、BPVは血管の安定性、HRVは自律神経の働きを反映しています。

 

さて、認知症リスクの指標として、まず、BPVの重要性についてです。

従来、認知症リスクの予測にはHRVが用いられていました。

最近の研究ではBPVの方がより強い予測指標であることが示唆されています。

研究方法として、平均年齢54.9歳の44,730人の参加者を対象に、平均15.4回の血圧測定を行いました。

その結果、BPVとHRVを同時にモデルに含めた分析で、BPVがADRD(認知症関連疾患)との関連が強いことが明らかになりました。

特に注目すべきは、収縮期のBPVが認知症発症と関連していた点です。

一方、HRV単独では認知症リスクとの関連は確認されませんでした。

これは、BPVが心血管系だけでなく、自律神経系の健康状態を示す可能性があることを示唆しています。

この研究の意義と将来の展望です。

認知症は急速に増加している問題ですが、この研究は臨床現場での認知症リスクをスクリーニングをすることにおいて、BPV単独の使用が有望であることを示しています。

これは、性別や人種を問わず一貫した結果で、より広範な患者層へのスクリーニングが可能になるかもしれません。

 

元論文:

Ebinger JE, Driver MP, Huang TY, Magraner J, Botting PG, Wang M, Chen PS, Bello NA, Ouyang D, Theurer J, Cheng S, Tan ZS. Blood pressure variability supersedes heart rate variability as a real-world measure of dementia risk. Sci Rep. 2024 Jan 22;14(1):1838. doi: 10.1038/s41598-024-52406-8. PMID: 38246978.