世界の終わりが訪れると、人々はどう振る舞うのでしょうか。
たまに海外の災害がニュースにあがる時、災害による直接被害よりも、市民による暴動の被害のイメージが強烈というのもあって、きっと荒れまくるに違いないと思っている自分がいます。
この問いに対する答えを求めて、米国のニューヨーク州立大学バッファロー校がある研究を行いました。
元論文:I Would Not Plant Apple Trees If the World Will Be Wiped: Analyzing Hundreds of Millions of Behavioral Records of Players During an MMORPG Beta Test
https://dl.acm.org/doi/10.1145/3041021.3054174
「世界の終焉を迎える時、人はどう行動するか?」
世界の終わりのリハーサルができれば良いのですが、世界が終わることなど、そうそう訪れるものではありません。(そうそうあったら困ります。)
で、研究者たちは思いつきました。
彼らは、オンラインゲームのサービス終了を、世界の終わりのリハーサルとして利用することにしたのです。
ゲームのサービス終了が迫ると、プレイヤーたちは自分のキャラクターや資産を失うことになります。
この「小さな世界終焉」を観察することで、本当の世界終末時に何が起こるかを調べることができると、研究者たちは考えました。
MMORPG(大規模多人数オンラインロールプレイングゲーム)の世界で、プレイヤーたちは突然の終焉を迎えることになります。
それは、ベータテストの終了と共に、すべてのユーザーデータが削除されるという、ゲームの世界における「終末」でした。
この研究では、MMORPG「ArcheAge」のクローズドベータテストを、極端な状況の代理として使用しました。
ベータテストの終了に伴い、プレイヤーのゲーム内行動の結果や罰が意味を失うため、人々がどのように行動するのかを分析しました。
270百万件のプレイヤー行動を分析した結果、パンデミックのような行動変化は見られませんでしたが、一部の異常値が反社会的行動(例:プレイヤー殺し)を示すことが多くなる傾向がありました。
しかし、幸いなことに、その行動は一部にとどまり、道徳の全面的な崩壊は起こらなかったのです。
とは言っても、「明日世界が崩壊しても、私はりんごの木を植えるだろう」という言葉とは裏腹に、プレイヤーたちはキャラクターの成長を放棄し、クエストの完了、レベルアップ、能力の変更などが急激に減少しました。
それらのことに意味を見出すことができなかったのですね。
一方で、世界終末を迎えたプレイヤーたちの行動には、「散財型」が多く見られました。
最後に豪遊を楽しんでいる人々が多くいたのです。まるで、世界が終わる前の最後のパーティーのように。
また、最後の瞬間までゲーム世界に留まる人々は、終焉が近づくにつれて、それぞれの社会的なグループの人々とチャットを行いながら、幸せな感情を共有することがわかりました。
最後の瞬間まで仲間との絆を確かめ合っていたのです。
ちょうど、映画「Don’t Look Up」のラストシーンのように。
この研究は、ゲームの世界が人間の本質や行動を映し出す鏡であることを示しています。
終末が迫ると知ったとき、人々はどう行動するのか。ゲームの中での行動が、現実世界での人々の反応を予測する手がかりになるかもしれません。
ゲームの世界でさえ、終焉に対する人々の反応は興味深いものがあります。
りんごの木を植えるのか、それとも放棄するのか。人間の心理を探る試みは、終わりそうにありません。
さて、あなたなら世界が終わるとしたら、どうしますか?
りんごの木を植える勇気があるでしょうか。
それとも、何もせずに終わりを迎えるでしょうか。
