人生には、トラウマやストレス、ネガティブな気分といった厳しくて苦しい経験をしなければならない時があります。
これらは心と体に大きな負担をかけ、その影響は私たちの未来の感じ方や見方に深く刻まれてしまいます。
これらの経験をどのように理解し、どのように対処するかは、私たちの脳の働きに大きく左右されています。
脳は、これから起こるであろう出来事について予測を立て、それに基づいて経験を構築します。トラウマとなるような厳しい経験があると、脳はその経験を重視し、未来の予測に大きく影響を与えます。
しかし、この予測の仕組みがトラウマに関しては問題を引き起こすことがあります。
トラウマの出来事は何度も何度も再体験されてしまい、それによって脳内の神経回路が強化され、同じような予測が繰り返されるようになります。
結果として、脳は世界を脅威に満ちた場所として認識してしまいます。そして、体を常に警戒状態に保つようになります。
トラウマは体に刻まれるという考え方が一般的になっていますが、実際には脳が私たちの体の感じ方や世界の見方を構築しているのです。
だからこそ、トラウマからの回復には、体を癒すことよりも、脳の予測を変えることが重要になります。
トラウマからの回復は簡単ではありませんが、不可能ではありません。
ヨガやダンス療法、演劇などの方法を用いて、脳の予測を変える試みがなされています。
これらの方法は新しい経験を作り出し、脳が将来的にさまざまな予測をする能力を広げるのを助けるのです。
脳は科学者のようなもので、予測は仮説のようなものです。
これから何が起こるのか、なぜそれが起こるのかを予測し、それに基づいて感情を生み出します。
そして、良い科学者のように、私たちも自分の仮説をテストし、情報を集めることで自分の経験をよりよく理解することができます。
トラウマは頭の中にあると言うと、それは否定的に聞こえるかもしれません。
しかし、実際にはすべての経験は頭の中にあります。
美しい夕日を見ることも、心地よい爽やかな空気を感じることも、美味しい飲み物を味わうことも、すべては脳が作り出す経験です。
だからこそ、私たちは自分の経験に一定のコントロールを持つことができ、トラウマの記憶を管理する方法を選ぶことができるわけです。
トラウマの記憶が未来に再び現れることもあるかもしれません。しかし、それに必ずしも囚われる必要はありません。
その内容をどのように管理するかについて、完璧でなくても、ある程度コントロールすることができるはずです。
それは、私たちの回復力と変化の能力を示す証となります。それはトラウマからの回復の途上の希望の光です。
