小説「同志少女よ、敵を撃て」

 

 

昨年2022年の本屋大賞を受賞した小説です。

本屋大賞というのは、「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」ですから、その面白さは保証されたものだということでしょう。

実際に書店に足を運ぶと、面陳列の常連でしたから、私の目にもずっと入っていました。

「流行もの」に敏感な私ですが、それでも、手に取るのに躊躇していたのは、いわゆる「戦争もの」であることは、無関係ではないです。

また「ラーゲリより愛を込めて」を読んだ直後でもあって、続くのもなあとためらっていました。

ところが、ふと読み始めてみたら、とまりません。

作者はこれがデビュー作だと言いますから、それが信じられません。すごい作家が現れたものだと思います。

ネタバレにならないように、アマゾンの紹介文を乗せますね。

 

独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵”とは?

 

本屋大賞受賞式の作者である逢坂冬馬さんのスピーチがYouTubeにありました。スピーチの冒頭で、折しもロシアのウクライナ侵攻について悲痛な胸のうちを語り、真剣な表情で平和について訴えていました。

そして、最後にこんなことをおっしゃっていました。

 

「この作品は、戦争を通じて容易く変わってしまう人間の内面であるとか、あるいは価値観の転換をもたらす戦争の惨禍というものを描いたつもりでありますが、あの、立場を変えて…あの…何といいますか、特に、この戦争ですと、『武器をとって祖国を守るために戦え』と言っている主旨のように読み取られるならば、それは私の意図しているところではないというふうに言っておきたいと思います。」

 

それは戦争を描いた作者の苦悩を表す言葉として、とても重く深いものだと思いました。