それをニーズというのか自然の流れというのか、細切れ時間をつなぎ合わせるので、私は短編小説を好みます。
短編小説ならどの分野も良いのですが、読後に「落ちる」快感に期待があって、ミステリー小説が好きです。
この場合の「落ちる」というのは、物語の結末に「腑に落ちる」とか、作者の「謀略に落ちる」という意味で遣っています。
ミステリー好きはどう考えても作者に騙されたがっているのですね(笑)最後の最後に予想外のどんでん返しなどがあると、さらに最高です。
そんな私に、ちょうど良い短編小説を探して読むようになりました。
この「なんでもない一日 シャーリイ・ジャクスン短編集」はまさにうってつけの短編集でした。
なんでもない一日 シャーリイ・ジャクスン短編集(創元推理文庫)
シャーリイ・ジャクスン女史について、出版社の紹介文を引用します。
「人間の裡に潜む不気味なものを抉り出し、独特の乾いた筆致で書き続けたシャーリイ・ジャクスンは、強烈な悪意がもたらす恐怖から奇妙なユーモアまで幅広い味わいの短編を手がけたことでも知られている。」
読んでみると、登場人物すべてが一癖も二癖もあって油断がならないスリリングさがあります。
日常の風景を描いているのに、その描写が優雅なだけに、いつでも何か起こりそうな気配が漂っているのです。
ちょうどヒッチコックの短編映画を見ている感覚です。
なかには難解で、今でもまだ「????」が続く作品もありますが、短編小説の楽しさを十分に味わわせてくれる短編集でした。