リルケと北斎

ドイツ詩人のリルケは、パリの博物館で北斎の画を見て、北斎を心から尊敬するようになったと言います。

リルケが書いた「山」という詩があります。(石丸静雄訳)

 

 

  

 

三十六回も 百回も

画家はあの山を描いた

さらわれては また追いやられて

(三十六回も 百回も)

 

 

浄福に輝き 誘惑にみちながら 教えてくれることもない

あのふしぎな火の山に ――

そのあいだも 輪郭を着せられた山は

そのうるわしさを衰えさせることはなかった

日々のなかから千度も浮びあがり

たぐいない夜々を きっちりしすぎた着物のように

さらりとぬぎすてながら

すべての絵姿をただちに古くさいものにし

形から形へと高まっていった

冷淡に おおらかに なんの意見も持たずに ――

そしてにわかに 悟りを示し 神の顕現のように

あらゆる割れ目の奥から立ちあらわれるのだった

 

 
ここでいう「山」とは富士山のことです。そして、画家とはもちろん北斎のことです。

この詩を読んだあと、北斎の「赤富士」を改めて見てみました。

そして、もう一度「山」を読んだとき、リルケの描写に感動したことを覚えています。

 

 
芸術家同志、深く共感するところがあったのでしょうね。

 

 

Red Fuji southern wind clear morning

 

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