アンデルセン原作のあまりにも有名なお話「はだかの王様」は、青空文庫で読むことができます。
翻訳の底本は著作権が切れているのですが、訳文にはライセンスが存在しているため、そのまま転載するわけにはいきませんが、リンクを貼っておきますね。
あらすじを今さら紹介する必要もないとは思うのですが、ざっくり言うとこんなお話です。
ある国に、おしゃれな王様がいた。そこへ2人組の仕立て屋を名乗る男達が現れた。
新しい服が好きな王様に、彼らは「バカの目には見えない布地」で衣装をつくることができるという。
王様は大喜びで服を注文した。
彼らは城に専用の部屋を借りて、さっそく作業にとりかかった。
王様が役人を視察に行かせたが、「バカには見えない布地」はもちろん役人には見えない。役人は困ったが見えないとは言えず「作業は順調に進んでおります。」と王様に報告する。どの役人を遣わせても「順調です。」という報告が入る。
ついに王様が見に行く。しかし、やっぱり王様にも見えない。部下に見えて自分に見えないとは言えず、出来栄えを大声で賞賛する。
いよいよ王様の衣装はできあがった。お披露目のパレードをすることになり、存在しない衣装を身にまとって一同は行進する。
沿道の見物人も自分が見えないことを悟られないように口々にその衣装を褒め称えた。皮肉にも今までで最も賞賛された衣装となった。
そんななか、見物人の中にいた小さな子供が「王様ははだかだよ!」と叫んだ。群集はざわめいた。ついには皆が「王様ははだかだ」と叫びだした。
ふと、この「はだかの王様」のラストってどんな幕の閉じ方だっただろうと思ってしまいました。
王様は騙されたことを知って、あわててパレードをやめて城に逃げ帰ったでしょうか?
それとも、なおも「バカには見えないのだ」と主張して、押し通したでしょうか。
原作は、こういうラストです。
「でも、「いまさら行進パレードをやめるわけにはいかない。」と思ったので、そのまま、今まで以上にもったいぶって歩きました。めしつかいはしかたなく、ありもしないすそを持ちつづけて王さまのあとを歩いていきましたとさ。」
なるほどと思って、さすが王様!と感心しました。
間違っていると思っても、王家の行事であるパレードを完遂させたのです。しかも、今まで以上にもったいぶってとあります。
王様は見栄っぱりだったのかも知れませんが、人間の器は大きいのではと思いました。
恐らく王様や城の家来たちは、そうなることをある程度予想していたのでしょう。
だって、実際は見えていなかったのですから。
いわゆる「王家の事情」というもので、途中から引き下がれなくなっていたのかも知れません。
そういう「大人の事情」を打ち破ったのが、大人の世界と関係のない子供だったわけですね。
「はだかの王様」は集団思考や場の空気などの概念を説明するのによく引用されるお話ですが、ストーリーが単純なだけにいろいろな解釈が広がります。