腎臓のはたらきの検査に「クレアチニン」がありますが、今回はそれではなくて「クレアチン」のお話です。
もし筋トレやフィットネス界隈の住人なら、この言葉を耳にしたことがあるかも知れませんね。
クレアチンは、私たちの体、特に肝臓、腎臓、膵臓で生成される自然な化合物です。
赤肉や魚など、特定の食品にも少量含まれています。
私たちの筋肉でエネルギー源として貯蔵され、短時間の高強度活動を支える役割を担っています。
ここで言う高強度活動とは、例えば短距離走やウェイトリフティングのようなものです。
クレアチンは、細胞の主要なエネルギー分子であるアデノシン三リン酸(ATP)の再生に不可欠で、筋肉の収縮や細胞全体のエネルギー機能を支えるために重要な役割を果たします。
多くのアスリートやフィットネス沼の方々は、このクレアチンのサプリメントを服用することで、パフォーマンスの向上、筋肉量の増加、そして高強度の運動中における力とパワーの改善を図るのです。
クレアチンサプリメントは、筋肉中のクレアチンリン酸の可用性を増やし、これが迅速にATPに変換されることで、激しい身体活動中により大きなエネルギー供給を可能にすると考えられています。
科学者たちは、健康な成人におけるクレアチンサプリメントの「記憶への効果」を検証するランダム化比較試験を集め、その結果をまとめました。
研究では、クレアチンサプリメントがプラセボに比べて記憶力を向上させる効果があることが示されました。
特に66歳から76歳の高齢者において、この効果は顕著でした。
性別、介入の期間(5日から24週間)、摂取量(1日あたり2.2から20グラム)、さらには参加者の地理的起源による効果の違いは観察されませんでした。
しかし、この研究には限界があります。
分析された実験の質が中程度であること、そして記憶機能を評価するためのツールが統一されていなかったことが、所見の正確性を制限する要因となってしまっています。
それでも、この研究は、健康な人々に対するクレアチンサプリメントの記憶に対する効果についての可能性を示しました。
この研究は、食品やサプリメントが、思わぬ形で私たちの健康や能力に影響を及ぼす可能性を示しています。
クレアチンの話は、私たちの体がどのようにエネルギーを作り出し、使用するか、そしてそれが私たちの精神的機能にどのように影響するか、一つのヒントを提供しています。
元論文:
Prokopidis K, Giannos P, Triantafyllidis KK, Kechagias KS, Forbes SC, Candow DG. Effects of creatine supplementation on memory in healthy individuals: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Nutr Rev. 2023;81(4):416-427. doi:10.1093/nutrit/nuac064