声に出して読むことは、記憶の助けになるが理解するのは苦手

今日のお話は学習方法について。

社会人になっても、もちろん試験はあります。

かつて資格試験を受験する際には、前日からホテルに泊まり込んで最後の悪あがきをしたものでした。

もともと暗記ものは得意ではないのですが、年齢とともにますます苦手になってきました。

声に出して読んだり、実際にペンをもって書いたりして、悪戦苦闘です。

かつて20世紀初頭にさかのぼる研究から、「声に出して読むこと」が記憶の助けになると言われてきました。

これは後に「プロダクション効果」と名付けられ、記憶の向上に有効であることが広く認められるようになりました。

しかし、この方法がテキストの深い理解、つまり読んでいる内容の本質や概念を捉える能力にどのように影響するかは、これまであまり明らかにされていませんでした。

この疑問に対し、シカゴ大学のブレイディ・R・T・ロバーツ博士らが興味深い研究を発表しています。

この研究は、声に出して読むことが記憶だけでなく、テキストの深い理解にも役立っているかどうかを探るものです。

彼らは、異なる条件下での読み方(声に出して読む、静かに読む、通常とは異なるフォントで読む)が、記憶と理解にどのような影響を与えるかを調べました。

参加者はランダムに割り当てられた条件下でテキストを読み、その後、記憶と理解の両方を評価するためのテストを受けました。

結果は予想を超えるものでした。

声に出して読むことが、確かに記憶の保持には有効であることが再確認されました。

しかし、「深い理解」に対しては同様の効果は観察されませんでした。

記憶と理解は密接に関連していると思われがちですが、この研究は両者が必ずしも同じ方法で得られるわけではないことを示しています。

特定の学習目的に応じて、最適な学習方法を選択する必要があるということですね。

例えば、試験前に重要な用語や定義を覚える必要がある場合、声に出して読む方法は非常に有効かもしれません。

一方で、新しい概念を理解し、それらの概念がどのように相互に関連しているかを深く理解する必要がある場合は、単に声に出して読むだけでは不十分ということになります。

この研究から得られる洞察は、教育現場や個人の学習方法に対して、重要な意味を持ちます。

教師や学習指導者は、生徒や学生がテキストをどのようにして最も効果的に理解し、記憶に留めることができるかを考える際、これらの結果を考慮に入れるべきでしょう。

また、学習者自身も、自分の目的に最も合った学習方法を選択するために、このような研究結果を参考にした方がいいかも知れません。

 

元論文:

Roberts BRT, Hu ZS, Curtis E, Bodner GE, McLean D, MacLeod CM. Reading text aloud benefits memory but not comprehension. Mem Cognit. 2024;52(1):57-72. doi:10.3758/s13421-023-01442-2