1950年代、心理学者ソロモン・アッシュは、人々がグループの圧力に屈して間違った意見に同調することを発見しました。
アッシュは、線の長さを推測するというシンプルな実験を行いました。
この実験には俳優が参加し、故意に誤った答えを出しました。
すると、参加者の約三分の一が、この明らかに間違った答えに同調したのです。
これは、グループの圧力が個人の判断に大きな影響を与えることを示しています。
現代においても、この「同調現象」は重要な意味を持ちます。
例えば、オンラインコミュニケーションの増加により、私たちは異なるタイプの相互作用に日々直面しています。
この研究は、モラルに関する意思決定においても、人々が社会的規範に合わせて自分の態度や行動を変えることが示されています。
研究では、ポーランドの120人の参加者を使って、Zoomを通じたオンライン実験を行いました。
参加者は、道徳的ジレンマについて議論するグループに参加しましたが、実はその中の数人は実験のために配置された共謀者だったのです。
これらの共謀者は、あえて非倫理的な意見を述べることで、他の参加者がどのように反応するかを観察しました。
その結果、参加者の半数以上が共謀者の非倫理的な意見に同調する傾向が見られました。
これは、オンラインの環境でも、私たちが社会的な圧力に屈しやすいことを示しています。
対照的に、グループの影響を受けずに意見を述べた参加者は、より独立した判断を下しました。
このように、オンラインでの集団的な意見形成の場では、個々人の道徳観がどのように影響を受けているかを理解することが重要です。
「それは、本当に自分の判断なのか?」
「誰かに影響された倫理観で判断しているのではないか?」
常にそう自問し、オンラインの意見に流されることなく、自分自身の倫理観を持ち続ける必要があります。
この研究は、デジタル時代における社会的圧力の影響を理解し、自分自身の道徳的判断力を養うための一歩になるかも知れません。
デジタル時代における人間の振る舞いを理解すること。
そして、個人としての倫理を保持するために十分に気をつけるべきだと警告しています。
元論文:
Paruzel-Czachura M, Wojciechowska D, Bostyn D. Online Moral Conformity: how powerful is a Group of Strangers when influencing an Individual’s Moral Judgments during a video meeting? Curr Psychol. 2023 Jun 1:1-11. doi: 10.1007/s12144-023-04765-0. Epub ahead of print. PMID: 37359603; PMCID: PMC10233534.