PPIとCKDリスク:関連性はあるのか?

 

胃薬として広く使われるプロトンポンプ阻害剤(PPI)ですが、患者さんからよく質問があるのが「いつまでも飲んでいて良いのか?」ということです。

私は腎臓内科医ですから、例えば、その使用が慢性腎臓病(CKD)のリスクにどのような影響を与えるのか、患者さんやその家族が気にされるのは当然だと言えます。

最近の研究で、この疑問に答える手がかりが見つかりました。

 

元論文はこちら→

Kweon T, Kim Y, Lee KJ, et al. Proton pump inhibitors and chronic kidney disease risk: a comparative study with histamine-2 receptor antagonists. Sci Rep. 2023;13(1):21169. Published 2023 Dec 1. doi:10.1038/s41598-023-48430-9

 

この研究は、PPIとヒスタミン2受容体拮抗薬(H2RA)という別の種類の胃薬を比較し、それぞれのCKD発症率を調査しました。

研究チームは、韓国の国民健康保険のデータベースと病院の電子カルテを用いて、大規模なデータ分析を実施。

その結果、PPI使用者とH2RA使用者の間で、CKDの発症率に有意な差は見られませんでした。

つまり、この研究によると、PPIを使用してもCKDのリスクが高まることはなさそうです。

しかし、PPIの長期使用には潜在的な副作用も指摘されており、完全に安心とは言えない状況ではあります。

どんな薬もそうですが、医師の指示に従い、必要な場合にのみ利用することが重要です。

また、PPIによるCKDの発症メカニズムはまだ完全には解明されておらず、今後も研究が必要です。

私たちは、新たな研究結果を待ちつつ、現在の知識を基に最善の選択をしていく必要があります。

PPIの使用を検討している方や、すでに使用している方は、この情報を参考にして、医師と相談しながら適切な判断をしてください。

最終的には、あなたとあなたの健康を守るために、最適な治療法を選ぶことが大切です。