「失敗は成功のもと」とよく言われますね。
実はこれを検証した研究があります。
元論文はこちら→
Eskreis-Winkler L, Fishbach A. You Think Failure Is Hard? So Is Learning From It. Perspect Psychol Sci. 2022;17(6):1511-1524. doi:10.1177/17456916211059817
失敗から学ぶのは決して簡単なことではありません。
この研究では、400人以上の人に「架空の言語を学ぶゲーム」に参加してもらいました。
ゲームの最初でコツをつかみ、第1ラウンドの時点で成功した人々は、その後も成功し続けました。
ところが、最初でつまずいてしまって失敗した人々は、その後、改善の兆しを見せませんでした。
つまり、「失敗は成功のもと」にたどり着くのは、至難の業なのでした。
皮肉なことに、失敗から学ぶ最大の障壁は、その失敗がどれほどメンタルにダメージを与えたかということです。
自己評価が下がると、新しい情報を処理する能力まで低下します。
心が傷ついてしまうと、「これ以上何も知りたくない」という気持ちになるようなものです。
本当にそうなると、失敗から学び取る機会がどんどん減ってしまいますね。
成功と失敗、両方から学ぶにはどうすればいいのでしょう。
成功の場合は、シンプルです。
成功体験から「これが正解」という手応えを感じ、その経験を次に活かせばよいのですから。
でも失敗は、複雑です。
何が間違っていたのか、何をどう改善すればいいのか、一筋縄ではいきません。
例えば、試験の結果が出たとき、何が悪かったのか特定するのは一苦労です。
要するに、失敗から学ぶには「失敗分析」のスキルが必要なのです。
しかも、失敗ばかりに目を向けていると、そのうち成功したことすら忘れてしまうものです。
成功からも多くを学び、それを基盤にしてさらなる成長を目指す。
その方が、失敗に固執するよりずっと建設的とも言えます。
もちろん、失敗が成功のもと、というのは一理あります。
ただし、その「もと」に辿り着くためには、心の準備と分析スキル、それに少しの運も必要なのかもしれませんね。
「失敗とどう向き合いますか?」
この問いに対する答えは、きっと人それぞれ違います。