共感力が高いあなたへ:知らない間に健康リスク?

 

他人の感情や状況を理解し、共感する能力として、「共感力」は多くの人にとって美徳とされています。

しかし、この美徳が健康に与える影響については、あまり考えられていません。

というより、共感力と健康を結びつけて考える方がおかしいですよね。

しかも、今回のはネガティブな情報です。

 

元論文はこちら→

Manczak EM. Is there a cost to caring? Dispositional affective empathy interacts with depressive symptoms to predict higher C-reactive protein 8 years later. Biol Psychol. 2023;180:108573. doi:10.1016/j.biopsycho.2023.108573

 

この研究は、Erika M. Manczak氏によって主導され、Biological Psychology誌に掲載されました。

研究対象は、1994-1995年度から追跡されている「National Longitudinal Study of Adolescent to Adult Health(通称「Add Health」)」という代表的なサンプルを用いています。

この研究で収集されたデータには、感情的な共感力、抑うつ症状、そしてC-反応性タンパク質(CRP:体内の炎症マーカー)に関する情報が含まれています。

驚くべきことに、特に抑うつ症状が少ない人々において、共感力のレベルが高いとC-反応性タンパク質のレベルが高くなる傾向が確認されました。

この炎症反応は、心臓病や脳卒中、炎症性腸疾患などの慢性疾患と関連するものです。

この事実は、共感力が高い人々が他者の感情に敏感であるため、その結果としてストレスを感じやすい可能性があるとも考えられます。

このストレスが、体内で炎症反応を引き起こす可能性があるわけです。

もしかしたら、鈍感な人が生きやすいっていうのはこのあたりにあるのかも知れないと思ってしまいました。

共感力が高いと、他人の問題に対して感じるストレスが炎症を引き起こす可能性があるというのは、何とも皮肉な話です。

このように、共感力という美徳が持つ「諸刃の剣」の性質を考慮することは、心と体の健康にとって重要かもしれません。

共感力が高いとされる人々は、その特性が健康に与える影響についても意識する必要があるでしょう。

「薬も過ぎれば毒となる」というのは、こういうことを言うのでしょうね。