スマートフォンでの読書は理解が乏しい?

 

片手にスマートフォン、指先で軽くなぞるページ。

現代社会では、この光景が日常となっています。

しかし、この便利なデバイスが、私たちの脳や心にどのような影響を与えているのでしょうか?

そんな興味深い研究が、その一端を明らかにしています。

 

元論文はこちら→

Honma, M., Masaoka, Y., Iizuka, N. et al. Reading on a smartphone affects sigh generation, brain activity, and comprehension. Sci Rep 12, 1589 (2022). https://doi.org/10.1038/s41598-022-05605-0

 

この研究では、34人の健康な成人を対象に、スマートフォンと紙の両方での読書を実施。

その際、ため息の頻度、脳活動、理解度を測定しました。

結果は、スマートフォンでの読書は、紙媒体と比較してため息の頻度を減少させ、前頭皮質の過活動を引き起こし、結果として理解度が低下することが判明しました。

「ため息」と聞くと、何となく漠然とした感情が湧いてくるかもしれませんね。

しかし、この研究によれば、ため息は脳や心の健康に密接に関わっているのです。

ため息はリラクゼーションの促進やストレスの軽減、さらには肺機能の維持にも寄与しています。

つまり、スマートフォンでの読書ではため息が減少していて、これらの健康的な機能が損なわれており、脳の過剰な活動が引き起こされる可能性があるわけです。

これが、読書理解に影響を及ぼす一因となっているのかもしれません。

この研究は、電子機器の普及に伴う新たな課題を示唆しています。

私たちの身近なテクノロジー(視覚環境)が、予想もしなかった形で私たちの身体や心、認知機能に影響を及ぼしているようです。

ただし、この研究では客観的な認知負荷の測定が行われなかった点、身体の動きが実験に影響を与えた可能性がある点が挙げられています

 

スマートフォンと紙のページ、どちらもそれぞれの良さがありますが、健康を考慮したバランスの取り方が、これからの時代には求められているのかもしれませんね。