いい加減な情報に対する盲目性

 

自己評価というのは難しいですね。

低すぎると自信のなさにつながりますし、高すぎると何でもできる気がしますが、実力に見合っていないので、結局は自分も周りも困ることになります。

心理学者たちはそんな自己評価の高い人々が、実は「いい加減な情報」に対して驚くほど無防備であることを発見しました。

 

元論文はこちら→

Shane Littrell & Jonathan A. Fugelsang (2023) Bullshit blind spots: the roles of miscalibration and information processing in bullshit detection, Thinking & Reasoning, DOI: 10.1080/13546783.2023.2189163

 

この現象は「いい加減な情報に対する盲目性」と名付けられ、412人の参加者を対象に行われた研究で明らかにされました。

この研究では、参加者に20の文章を評価してもらいました。

そのうち10個は有名人の言葉で、残りの10個は意味のない、いい加減な文でした。

結果として、自己評価が高い人は、いい加減な情報に対する警戒が低く、逆に自己評価が低い人はそのような情報をしっかりと見抜く能力が高かったのです。

自己評価が高いと、自分がアインシュタイン級の天才だと思い込んでいるけれど、実際は「地球は平らだ」と信じているようなレベル。そんな感じです。

さて、この「いい加減な情報に対する盲目性」は、ダニング=クルーガー効果とも関連があります。

ダニング=クルーガー効果とは、能力が低い人が自分の能力を過大評価し、逆に能力が高い人が自分の能力を過小評価するという現象です。

簡単に言うと、素人はちょっとかじっただけで「それ」を分かったつもりになり、専門家は「それ」に対してあくまで謙虚であるということ。

だから「分かった、分かった」という人ほど、何も分かっていない。

シェイクスピアも同じようなことを言っています。

「愚者は自分を賢明だと考え、賢者は自分を愚かであると知っている。」

これらの現象が示すのは、自己評価と実際の能力、または認知とのギャップが存在するということ。

だからこそ、知的な謙虚さが求められます。

次に何か信じられない情報に出会ったとき、一度立ち止まって考えてみる必要があります。

それが、自分自身を守る最初の一歩かもしれません。