健康維持のために運動は不可欠、とはよく言われることです。
しかし、忙しい日常で運動に時間を確保するのはなかなか難しいものです。
運動どころか、家族優先で自分の時間をつくることさえ難しいという方はたくさんいらっしゃいますね。
そんななか、「運動しなくても、運動したような効果が得られるかもしれない」というある物質が話題になっています。その名も「ERRアゴニスト」。
Billon, C., et al. (2023). A Synthetic ERR Agonist Alleviates Metabolic Syndrome. Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics. doi.org/10.1124/jpet.123.001733.
この物質は、細胞内のERR(Estrogen Related Receptor)という受容体に働きかけます。
ERRは、エネルギー代謝や脂肪酸の酸化、インスリン感受性といった、私たちの健康に密接に関わる多くの生理機能を調整します。
ERRアゴニストがERRに作用することで、これらの生理機能が向上する可能性があるのです。
具体的なデータを見てみましょう。
研究者たちは20週齢のマウスにERRアゴニストを投与しました。
その結果、マウスの体重は平均で約12%減少。
さらに、脂肪質の増加はわずか0.5g以下で抑制されました。
興味深いことに、血中の高密度リポタンパク(HDL)とトリグリセリド(TG)も減少しました。
この結果から一歩踏み込んで考えると、ERRアゴニストがもたらす「運動しなくても、運動したような効果」についての可能性が浮かび上がってきます。
エネルギー代謝が良くなり、脂肪が燃焼しやすくなるというのは、運動をしたときに期待される効果と似ていますね。
もちろん、この研究はまだマウスを対象とした初期段階のものです。
しかし、このような前向きなデータが示す未来は、新しい治療法や健康維持の方法に期待が持てるものです。
運動が苦手な人、時間が取れない人にとって、このような科学的な発見は大きな希望を与えるかもしれません。
もちろん、研究が進むにつれて詳細が明らかになるでしょうが、そのプロセス自体が人々の健康への興味や関心を高める重要なステップとなるとは思いませんか。