「ムペンバ効果( Mpemba effect)」と呼ばれている現象があります。
これは、ある条件下で、「熱いものの方が冷たいものより早く凍る」という現象のことを言います。
これは、タンザニアの13歳の少年、ムペンバ君が1963年に発見したもので、現在でも物理学の謎の一つとされているものです。
熱い方が早く凍るなんて、私たちの常識とはまったく逆です。
どう考えても、零下に早く達するのは、冷たい方でしょう。
温度差の分だけ、熱い方は絶対に時間がかかるはずだと思います。
2020年、カナダのサイモンフレーザー大学の研究者たちは、このムペンバ効果の謎に迫る新たな発見をしました。
彼らは、水ではなく、粒子の温度変化を調べることで、この現象を再現しようとしました。
その結果、特定の条件下で、高温の粒子は低温の粒子よりも早く冷却されることが確認されたのでした。
この結果から、ムペンバ効果は、温度差が冷却時間の決定要因ではないことが示されたのだそうです。
つまり、冷却という現象は、私たちが思っていたよりもずっと複雑だということでした。
しかし、この現象の正確な理由はまだ明らかになっていません。
ムペンバ効果は、不純物の影響や容器の冷却効率が原因なのではないかともされています。
しかし、今回の研究は、これらの要因を排除した単純なモデルでもムペンバ効果が確認できることを報告しました。
さて、このムペンバ効果、ただの氷の作りやすさという話だけにとどまらないようです。
最新の理論では、より冷たいものの方が早く熱せられるという「逆ムペンバ効果」の存在も示唆され始めています。
これらの現象を理解して応用することは、今まで行ってきた「熱を扱うシステム」、例えばエアコンや暖房に組み込むことができれば、私たちの生活が大きく変わるかもしれません。