脳が描く現実:感じる世界の創造力

 

人間の脳は、自分が存在する世界を直接感じることはできません。

それは、頭蓋骨という静かな閉ざされたスペースの中にあるからです。

脳が現実を体験するには、感覚器官からの信号を受け取り、それを解釈する必要があります。

外部世界からの情報を解釈し、自分の理解へと変換するプロセスが、絶えず行われているのです。

例を挙げてみましょう。

大きな音が聞こえたとします。それが車の排気音なのか、ドアが閉まる音なのか、それとも犬の鳴き声なのか、脳はその原因を推測します。

この推測は、過去の経験に基づいて行われます。

脳は過去の似たような状況を思い出し、それを現在の状況に適用します。

これは予測とも呼ばれ、脳が現実を理解するための重要な手段です。

 

さらに、人間の脳は物質的な特性だけでなく、抽象的で機能的な特性も分類する能力を持っています。

これで可能になるのは、人間は「社会的現実」を創造することです。

社会的現実とは、私たちが生活する集団内で、物事に機能や意味を割り当てることで生まれる現実です。

例えば、ただの「紙切れ」に「お金」の価値を割り当てることや、国境を引くことで市民や移民を区別し、分類することなどがそれにあたります。

 

しかし、脳が過去の経験から新しいものを創造する能力は、二面性を持っています。

それは、私たちの脳が現在の状況から離れて未来を想像することができる一方で、現在に留まることが難しくなることです。

現実とは、外部世界からの情報と脳の解釈の結果生まれるものです。それは常に変化していくものですし、個々の経験によって異なります。

だからこそ、私たちの脳は現実を検出するのではなく、それを創造していくのです。