人の心の「3人の役者」

  

私には若い頃から「先延ばし癖」があります。締め切りの直前になって、お決まりのように苦行を経験することになるのです。

マラソンをスプリントのように一気に駆け抜けようとするランナーに似ている、と言ったら気取りすぎで、もちろん、この方法は多くの問題を引き起こしてきました。つまり、後悔の山を築き上げてきました。

人間の心は、混沌と秩序が混在する舞台に例えられます。そして、常に三つの役者が舞台を埋め尽くします。

一人目は「即興の快楽吟味師」。

この役者は、目の前に楽しみをちらつかせ、本当に取り組むべき仕事から目を逸らさせます。無意味なウェブサイトの閲覧や、冷蔵庫の中身を見ること、さらにはYouTubeの動画鑑賞に我々を誘惑するのです。すぐに手に入る楽しみ、一瞬の満足感を求めるのがその仕事です。

もう一人の役者、「パニックモンスター」が警鐘を鳴らすと、即興の快楽吟味師は慌てて姿を消してしまいます。

パニックモンスターは、緊急性のある仕事や期限が迫ってくるタスクに反応して、目的の仕事に戻す力があるのです。つまり、危機が訪れると、それが優先され、他の全ては二の次になります。

しかし、このパニックモンスターも、その効力は限定的で、具体的な締め切りがない事項に対しては無力です。

例えば、自己啓発や健康管理などの長期的な先延ばしは短期的なものより破壊的で、人生における不幸や後悔の原因となりうるのです。

ここで、また、マラソンに例えてみましょう。

マラソンは、短期的な楽しみを追求する即興の快楽吟味師のようだと失敗します。走り始めて最初の数キロは楽しく、一時的な楽園のように感じるかも知れません。しかし、その快楽は長続きせず、体力が尽き、絶望の淵へと追いやられてしまうのです。

このような状況に対抗するための一つの方法は、「理性のナビゲータ」を育てることです。このナビゲータは、長期的な目標と短期的な誘惑の間でバランスを取る役割を果たします。

これは、マラソンで給水を取り損ねてしまったときに、次の給水所を探してくれる助け舟の役割を担ってくれます。ナビゲータがコース上の給水所を示し、必要なときに休息を提案してくれるのです。そして、その全てを長距離レースの全体像とバランスさせます。休息を取ることは大切ですが、レースの全体像を見失ってしまうと、即興の快楽吟味師の誘惑に翻弄されてしまいかねません。

熟練したナビゲータは、自分の行動をよく理解して、それぞれの行動がどのように長期的な目標に影響を与えるかがわかっているのです。

人生のマラソンを走りぬくとは、即興の快楽吟味師とパニックモンスター、そして理性のナビゲータという三つの要素が一緒に働くことが必要です。

私の場合、即興の快楽吟味師のチカラが強すぎて、理性のナビゲータがなかなか育っていないのが悩みです。