昆虫が海にいないのはなぜか? 新説から

 

昆虫学の分野には全く詳しくないのですが、そこには長年解明できていない大問題があるそうです。

それは「なぜ昆虫は海に進出しないのか?」

世界中の生物種は約175万種、そしてその半数以上は昆虫であるといわれています。しかし、昆虫が海中で生息している種はほとんど存在しません。

このことは、昆虫学の専門家や愛好家を含め、長年にわたり研究と論争が続けられてきた大問題らしいのです。

言われてみれば、確かにそうですね。陸上なら、森林でも土壌中でもあらゆる環境に適応しているように見える昆虫も、海洋環境に適応している種は極端に少なく感じます。

同じ節足動物のエビやカニなどの甲殻類は文字通り海の中で「跳梁跋扈」していますが、昆虫と姿は似ていても、違うものです。

 

ネット記事で、最近東京都立大学と杏林大学の研究チームが新説を発表し、多くの注目を集めているらしいというのがわかりました。

元論文はこちら → Eco-evolutionary implications for a possible contribution of cuticle hardening system in insect evolution and terrestrialisation

 

この研究は、昆虫が海にほとんど存在しない理由について新たな説明を提供しています。

昆虫の外骨格を硬化する過程は酸素分子を必要としますが、海水中の酸素濃度は陸上の空気に比べて非常に低いため、これが昆虫の海への進出を妨げている可能性があるというのです。

一方、昆虫に近縁な甲殻類は海水中に豊富に存在するカルシウムを利用して外骨格を硬化し、海水中で繁栄しています。

このため、カルシウムを利用して頑丈な外骨格を形成する甲殻類が支配的な海水環境は、昆虫にとって過酷な環境となっていると考えられます。

 

ただし、この説に対しては異論も多く、また、昆虫が海中で生息しない理由には浸透圧や塩分などの別の要因があるとする学者もいるようです。

 

ちなみに、調べてみると、海中に残った昆虫はウミアメンボぐらいでした。けれども、アメンボですから、完全な海生昆虫とは言えない気がします。

 

昆虫に限らず、それぞれの生存条件に応じて生物たちは進化してきました。

「なぜ昆虫は海に進出しないのか?」という問題への取り組みは、生物たちがどうやって進化してきたのかを探る糸口なのですね。

この遠大な進化の道筋も、いつかきっと解明される日がくるのでしょう。