ダイ・ヴァーノン「カップ&ボール」

 

久しぶりにクロースアップマジックのお話。

というのも、ダイ・ヴァーノンの動画をたまたま見つけたので、嬉しくて、やや興奮気味なのです。

ダイ・ヴァーノンは、20世紀の最も影響力のある伝説のマジシャンで、多くのマジシャンの指導者としても知られています。

1894年、カナダ生まれ。本名はDavid Vernerでしたが、友人たちが彼を「Dai」(発音は”Day”)に短縮し、ニューヨークに移ってからはステージ名としてDai Vernonを使い始めました。

彼は裕福な家庭で育ち、若い頃から特にカードマジックに優れた才能を見せました。

彼のマジックへの情熱は、1902年に初めて出版された「Artifact, Ruse, and Subterfuge at the Card Table」という書籍によって引き起こされました。(この本の著者はErdnase(アードネス)というらしいのですが、偽名であり正体不明の人物だそうです。)

彼はこの本を人生のバイブルとし、その全文を暗記しました。

彼は、特にカードを使ったクロースアップマジックで名を馳せました。

また、現代のカップ&ボールルーチンを確立し、リンキングリングルーチンでも知られています。

彼はより小さな環境でパフォーマンスを行うことを好み、他のマジシャンの集まりやナイトクラブでパフォーマンスを行いました。

彼は裕福な家庭出身で、そのような環境でうまくやっていく方法を知っていたため、1920年代には彼がパーティーでのエンターテイメントを担当することがよくありました。

彼はまた、テレビ出演やクルーズでのパフォーマンスも行っていました。

彼が最も知られていることの一つは、知識を惜しげもなく共有したことです。

彼は「プロフェッサー」と呼ばれ、多くの弟子を持っていました。

そのため、彼の名前は今でもマジシャンにとって非常に重要です。

彼は出版活動にも非常に積極的で、自分に会いに来ることができないマジシャンのために小冊子や大きな本を書き、イラスト付きでマジックの理解を深めることができるようにしました。

今回、紹介する動画ではダイ・ヴァーノンが78歳の時のものです。演ずるのは「カップ&ボール」。

導入部分では。彼はこんな話をしています。

「皆さん、私は若者ではありません。78歳で、マジックを72年以上研究しています。最初の6年は無駄に過ごしました。」

もちろん冗談なのですが、マジック漬けの人生であることを誇りにしていたヴァーノンにとって、マジックに触れる前の6歳までの幼少時代は「無駄に過ごした」というのは案外本音だったかも知れません。

さて、ここから「カップ&ボール」の演技の前のお決まりの名セリフです。

「これから、世界で最も古いマジックをお見せします。歴史上記録された最も古いトリックで、古代エジプトまでさかのぼります。」

実は、これは必ずしもただの演出上のセリフではなく、古代エジプトの墳墓の中から発見された「カップ&ボール」が世界で最も古いマジックの一つであるという事実に基づくものです。

テーブルの上に純銀のカップと赤いボールが3つずつ。そして、魔法の杖を片手に持ちます。

さて、いよいよヴァーノンのスライハンドが炸裂するのですが、あまりに早業すぎて、観客がついていけていないのがよくわかります。

「昔は、このトリックの上手さでマジシャンの腕前を評価していましたが、彼らは非常に速いスピードで行っていました。しかし、今日はすべてスローモーションで行いますので、正確にどのように行われているか見えるでしょう。わからないことがあれば、後で少し説明します。」

どこがスローモーションなんじゃい!と今ならツッコミが入るところでしょう。

ヴァーノンの貴重で素晴らしい演技を、何度もリピートして観てしまいました。