想像力で補う

 

日本人が持つ江戸時代の原風景は、時代劇そのものから受けたイメージそのままと言ってもいいと思うのですが、最近は時代劇も少なくなって、もしかしたら浮世絵がその役割の一端を担っているのかも知れないとも思っています。

例えば、富士山はもちろん広く日本人から愛される山ですが、「富士山の絵を描いてください」と言われたら、無意識に浮世絵の富士山をイメージして描くのではないでしょうか。

葛飾北斎の富嶽三十六景の「赤富士」は実物では滅多に見られない富士の絶景を写した絵画ですが、それをどうしてもイメージしてしまいます。日本人の富士のイメージを遺伝子上に強く受け付けているのだと思います。

「今の世の中とても便利」が口グセのようになっていますが、ネットで検索してみると、浮世絵をシリーズでそのまま閲覧することができるサイトもあるので、風景や人々の生活の様子を窺い知れて、かなり楽しめます。

今日の話題は、葛飾北斎ではなくて安藤広重の「東海道五拾三次」、いわゆる保永堂版と呼ばれるものです。

面白いと思ったのは、図版番号14「原」隷書版副題なしの絵です。

富士山の山頂を描いていないのです。枠からはみ出してしまっています。

これは斬新だと思いました。あえて山頂を描かずに、その分、富士の雄大さを表現しています。

こんな富士山もいいものですね。

 

Hara Reisho Tokaido