「気の緩み」

 

「徒然草」からは、「よりよく生きる知恵」というものを学ぶことができます。

百九段には「木登り名人」が登場し、兼好法師が名人から極意を聞き出しています。

 

「ある木登りの名人が、人に指図して高い木に登らせ、梢を切らせていました。しかし、非常に危険な場所であっても何も言わずに放置し、人が家の軒ぐらいの高さに降りてきたときに、名人は「しくじるな。気をつけて下りよ」と声をかけました。

「これぐらいの高さになれば、飛び降りても下りられるでしょう。どうしてそのように注意するのですか?」と尋ねました。すると、名人はこう答えました。「その通りです。目がくらむほどの高さで枝が折れそうに危ない場所では、本人が恐怖心を抱いているため何も言うには及びません。過ちは、安全な場所になってから必ず起こるものです。」

 

高いところは自分が用心するから大丈夫だけれども、人が失敗するのは気が緩んだ低いところです。ミスは張りつめていた緊張から「もう大丈夫」だと解き放たれたときに起きるものだと名人は教えてくれているのです。

これは、私たちの日常で起きがちなことです。

例えば、「サンキュー事故」というのがあります。

渋滞中の交差点で、直進する自動車が右折する車を優先するために停止すると、対向する自動車が右折した後に、直進車と同じ方向の左側をすり抜けてくる自転車やバイクと衝突する事故のことです。

直進車は親切心でゆずってくれるのですが、ゆずってくれたので、あまり時間をかけても悪いと思ってさっさと右折しようと油断してしまうのです。

ドラマやマンガでも、古くはマカロニ刑事の最期のシーン、近くでは五条悟の封印など…。(それが単に言いたかっただけかも 笑)

緊張したあとの気のゆるみについては、どうしようもないところはありますが、気を引き締めたいところです。