「八大人覚」

 

道元が著した「正法眼蔵」の最終巻は「八大人覚」(はちだいにんがく)について述べられています。

 

諸仏は是れ大人(だいにん)なり

大人の覚知する所、ゆえに八大人覚と称す

この法を覚知するを涅槃の因と為す

我が本師釈迦牟尼仏、入涅槃の夜の最後の所説なり

 

意訳)

諸仏は大人=徳を備えた優れた人である。この大人が覚知する八つの法なので八大人覚という。この法を自覚することが、涅槃(煩悩を滅ぼした悟りの境地)の因なのである。これは我々の宗祖、釈尊が入滅された夜の、最後の説法である。

 

釈迦が最後に説法した「遺教経」の中に「八大人覚」があります。道元も死期が近いことを感じたのでしょう。道元は釈迦の入滅に自身を重ね、最後にこの「八大人覚」を弟子たちに説きました。

「八大人覚」とは次の八つの項目を言います。

 

1・少欲(多くを求めず、欲望に節度を持つ)

2・知足(与えられたものに満足する)

3・楽寂静(喧噪を離れ、静かな場所を求める)

4・勤精進(怠ることなく努力を続ける)

5・不忘念(心を奪われず、さとりに心をつなぎとめる)

6・修禅定(坐禅に集中する)

7・修智慧(ものごとにこだわらない智慧を持つ)

8・不戯論(人の心を乱すような誤った話はしない)