「顔に着目せよ」

 

 

2018年にNHK Eテレで放送された番組の書籍版なのだそうです。

私はテレビを見る習慣がないので、紙媒体になって初めてその存在に気づいたり、その良さを知ることになるのですが、この番組(とこの本)もそのうちのひとつでした。

「100分de名著」と同様、知っていたらきっと番組を録画してでも視聴していたと思うほど、興味ドンピシャの内容でした。

構成としては、相談者からの悩みが紹介されて、その悩みに答えてくれる哲学者が紹介され、解説が入るというものです。

特に第2回「孤独を抜け出るには?」の、エマニュエル・レヴィナスは面白かったです。

レヴィナスは「顔」を強調します。

人間は「顔」があってはじめて他者と対峙することになります。他者の顔と対峙する時、神秘の関係が人間同士の出会いの中で成立するのだと言います。

番組ではレヴィナスのこの言葉をもって悩みに対する答えとしていました。

「孤独から抜け出るために他者の顔を見つめることから始めよ」

そして、続けてこう解説していました。

「顔は一人ひとり異なるもの。そこに自分とは違う他者を発見し、みんなも同じように喜びや苦しみを抱えて生きていることに気づけばいいのです。自分とは違う他者が、この世で頑張っていることに気づけば、孤独な闘いではないと思えるはずだということです。」

レヴィナスはたくさんの邦訳がありますが、どれも難解です。それを分かりやすく解説してくれているだけで嬉しいです。

ちなみに、顔を見るときに大切なのは、一箇所をジロジロ見る「凝視」ではなく、顔全体を真っ直ぐに見つめる「直視」なのだそうですよ。

孤独を感じたとき、気味悪がられない程度に、顔を見つめることを試してみても良いかも知れません。