「ちょっとの毒」

 

私の研修医時代からの師匠には、医師としてだけでなく、人として多くを学ばせていただきました。

師匠に対して恐れ多いのですが、ちょっとの毒気が絶妙な、それが茶目っ気となる不思議な魅力の先生です。

いつも病院内外の難題を、背負わされてしまう立場にありました。

しかし、「なんでそんなことを先生が?」と思われるような事案まで抱えていて、そばで見ても同情することも多かったのです。

しかし、いったい出口がどこにあるんだろう?と気が遠くなるような問題も、力が抜けた感じで辛抱強く地道にこなしていくのでした。

そんな先生から私が学んだことは、例えば「ちょっと毒があったほうが人生うまくいく」「必ず何かが起こる。うまくいくのは滅多にないと思っておく」など。あと「弱い自分をさらけだす」というのもあります。

情に厚いのですが、物ごとをクールに批評するのも味があります。

「ちょっとの毒」には面白みがありますし、ユーモアがあります。前向きに生きるコツだとも言えます。

さしずめ「毒を持って毒を制す」というところでしょうか。

師匠の足元にも及ばない私には、「ちょっと」の加減で失敗したりしますが、それでも多くの機会で救われています。