「心の時間速度」

 

 

歳をとると時間を短く感じると皆が言います。一方で子どもの時のひとときは、濃密な時間として思い出されるものです。

確かに、この歳になって感じるのは1ヶ月が過ぎるスピードの速さですね。2月は特に短く感じます。

神谷美恵子さんはその著書「こころの旅」の中で、こんなことを言っています。

 

「よく言われることだが、何もせずに過ごす時間、またはくりかえし単調なしごとをしている時間は、老若にかかわらず長く、退屈なものとそのときには感じられるが、あとからかえりみると、きわめて短く感じられる。したがって老いてもなおつねに新しいものを取り入れたり、新しい工夫をしたりする必要のある仕事を持ち、それに打ちこんでいられれば、そのときは「我を忘れて」、「アッという間に」時間が経ち、あとからかえりみれば、内容ゆたかな長い時間であったと感じられるのではなかろうか。しかし、これはもちろん、だれにも望めることではない。」

 

退屈で単調なしごとはあとからふりかえると、印象が薄いですし、下手をすると思い出せずに記憶の底へと沈んでしまっているかも知れません。

エキサイティングで楽しい時間は、あっという間に過ぎるものですが、あとからふりかえると、何度も何度も反芻しますし、楽しい思い出として胸に刻まれるものです。

「あとからふりかえる」のが「心理的時間」の長短を判別する試験紙のようなものになりそうですね。

だから、仕事でも趣味でも、人づきあいでも、家族との会話でも、内容がゆたかであるように過ごしたいものだと思います。

神谷美恵子さんは、こんなことも言っています。

 

「永遠の時間は自分の生まれる前にもあったように、自分が死んだあとにもあるのだろう。人類が死にたえても、地球がなくなっても、この「宇宙的時間」はつづくのだろう。自分はもともとその「宇宙的時間」に属していたのだ。だからその時間は自分の生きている間も自分の存在を貫き、これに浸透していたのだ。げんに一生のうち、その「永遠の今」を瞬間的にでも味わう恵みを与えられた人もある。」

 

どんなことをしてきたかよりも、今おかれたところでちゃんと生きるということの方が大事なのだなと思います。