小説「#真相をお話しします」

 

 

大変面白く読ませていただきました。

今年の本格ミステリ大賞にノミネートされているというのも、頷ける作品です。

5つの短編、「惨者面談」「ヤリモク」「パンドラ」「三角奸計」「#拡散希望」が収録されています。

この作品の題材は、現代の日本そのものを切り取ったものです。パパ活やマッチングアプリやリモート飲み会、「ゆーちゅーばー」など、2022年にリアルに感じる世の中の不穏な空気を背景に、ミステリが展開されていきます。

ミステリ好きな読者は、どんでん返しで騙されるのを快感とするヘンタイ達ですから、作者も一筋縄でおさめるつもりもなかったのでしょう。

特に、二重、三重のどんでん返しを見せた1話目の「惨者面談」は、思わず唸ってしまいました。(私が最も気に入ったのがこのお話でした。)

実際、騙されたという程度ではおさまらなかったのです。普通ならそこまでひっくり返すのなら、ごちゃ混ぜになりすぎてお話の成立が危うくなるはずですが、事前にあちこちにネタをひそませているおかげで、回収作業がスムーズでした。

この作者は、回収をきちんとしてくれますから、その点親切です。どの作品も矛盾点がないようにきちんと説明をしてくれています。そのうえで「裏の意味」(本当の意味)を匂わせて、ニヤリと笑っているのが目に浮かぶようです。

何より文章が読みやすいですし、ミステリ好きな方なら是非読んでもらいたい作品でした。