秋の月

 

徒然草の第212段から。

 

秋の月は、限りなくめでたきものなり。

いつとても月はかくこそあれとて、思ひ分からざらん人は、無下に心憂かべる事なり。

(訳)秋の月は、限りなく素晴らしいものである。いつでも月はこのようなものであると思って、秋の月のよさを分別しないような人は、まったく情けないことである。

 

今日もふと夜空を見上げると、半月から少しずつ膨らんでいく月が浮かんでいます。

吉田兼好が月や花を愛し、風や水に感興を催していたことは、徒然草の随所に知られたことですね。実際、第21段はこんな文で始まります。

 

よろづのことは、月見るにこそ慰むものなれ。

(訳)全てのことは、月を見れば慰められる。

 

私も月を眺めるたびに、心が穏やかになります。

月は空の同じところに留まりません。天上の軌道を動いてます。そして、形や大きさが日によって違います。昨夜の月は今日の月とは似ていますが違っています。

そのかわり、夜道では私たちの後をずっといつまでもついてきます。

秋の月にちなんで、久しぶりに「徒然草」を読み返してみました。