「私っとしている」

 

まど・みちおさんの詩は全て好きですが、特に気に入っているものがあります。

「カニ」というタイトルの詩です。

この詩を読むと、アメリカの古い映画「素晴らしき哉人生!」を思い出します。

この詩が哲学的と言われればそのような気もしますし、そんな堅いことを引き合いに出さなくても、とにかく良いのです。

 

 

  カニ

 

カニがカニッとしているのは嬉しい

カニがそれを気づいてないらしいので

なおさら しみじみと…

 

ああ こんな私も私っとしていることで

だれかを喜ばせているかもしれない

私がまるで気づかないでいるとき

いっそう しみじみと…

 

そう思うこともできるんかなあ

と私は私を胸あつくさせた

 

 

「カニがカニッとしている」も「こんな私も私っとしている」も、まどさんにしかできない表現ですね。

それなら「サクダがサクダッとしている」ことも、きっと許してもらえるよね。

そんな気にしてくれます。いつもそういう感じで励まされるのです。