お月さまから自分を眺める

 

澤木興道禅師の名言集を読んでいたら、やはりなるほどと膝を打つものがたくさんありました。

今日はそのなかのひとつを紹介します。

「自分というものに捉われてお月さまを眺めるから、悲しく見えたり嬉しく見えたりするのである。お月さまから自分を眺めたら間違いは起こらぬ。」

自分が世の中を見るのではなく、世の中の方から自分を見せよという、王道と言えば王道の禅の言葉ですね。理解が難しいです。

俳句の教本に「私が語らず、モノに語らせよ」ともありました。そこには共通点があります。

澤木興道禅師が言っているのは、執着を捨てよということ。自分よがりになっていたら、本来のお月さまの姿も見失ってしまいます。

お月さまが自分を見下ろしているかのように、我執を捨てて事実をありのままに捉えよと教えてくれているのです。

「私が語らず、モノに語らせよ」は、自分の感情のまま「寂しい」「悲しい」「嬉しい」などと表現するより、私以外のモノを描写することで「景が見える俳句」となるということでした。

俳句は「動詞の数は少ない方がいい」というのを聞いたことがあります。

マインドフルネスの「今、ここ」に通じるお話ですね。

澤木興道禅師はさらにこう言います。

「なんにもいらん。心空し境寂にして体如如(ありのまま)。われもない、かれもない、なんにもない。全宇宙ガラス張り。」

「全宇宙ガラス張り」っていい言葉だと思いました。とても気に入りました。