アニメ映画「音楽」

先日から、映画配信サービスの「あなたにおすすめ」のリストにあがってきていました。

普段から「AI にオレの何がわかるんだ」とひねくれていますから、そこにアップされるような映画は敢えて見ないのですが、サムネの異様さについ惹かれてしまいました。

 

アニメ映画「音楽」

 

絵を見た最初の印象では、画面がやけに明るく、インクがのらない漫画のコマをそのままアニメーションにした感じです。

登場人物達は会話をポンポンと弾ませるわけではなく、ためこんだ「間」が次のセリフを観客に無理やり捻出させたあげくに、(そこかい!)とツッコミを入れてさせてしまう絶妙さです。

絵柄のタッチは一定ではなく、描画アニメーションのあらゆる技法を駆使していて、それが時に静かに、時に迫力のシーンを生み出していました。(ライブのクライマックスでは「この世界の片隅に」の爆破シーンを彷彿とさせるものでした。)

彼らの青春のシュールさが心地よく、そのくせリアルな感情に、観賞後もしばらく浸っていました。

 

あらすじをざっくり言うと、楽器を触ったこともない不良学生たちが、思いつきでバンドを組むことから始まる物語です。

ベースのペグが何のためのものかもわからずに演奏している彼らは、当然、チューニングなどするはずもありません。

そんな彼らを、最初は下にみていた私たち観客が、最終的には感服してファンになってしまうのはなぜなのでしょう。

彼らは自分自身に嘘をつきません。気持ちのいい音を「気持ちがいい」と言い、他人の音楽を自分たちの耳で「素晴らしい」と称賛します。

誰の視線も評価も彼らの心にトゲを刺せないのです。

逆に行動する動機にもならないので、「飽きた」と思ったらすぐに解散宣言してしまうし、「いつものこと」だと達観されてもいます。

と、ここまでが私の前知識なしの感想。

 

観終わったあとに、このアニメの公式サイトを見て、びっくりしました。

 

制作期間は約7年超、作画枚数は実に40,000枚超、を全て手描き、クライマックスの野外フェスシーン をダイナミックに再現するため、実際にステージを組みミュージシャンや観客を動員してのライブを敢行。監督の岩井澤健治は、実写の動きをトレースする“ロトスコープ”という手法を採用。

 

(ロトスコープでよく例にあがるのが、ディズニーアニメ「白雪姫」ですね。)

とにかく、このアニメを7年を超える時間で完成させた監督の思いに感服です。素晴らしい作品でした。

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