「O・ヘンリー短編集」

 

O・ヘンリーの短編は、どれもあまりにも有名で、若い頃に読んだことのある作品ばかりです。(のはずです。)

日本語訳に親しんだあとは、英語の教材として触れ、内容を味わうというよりも文法の上っ面をなぞるようになって、なんとなく遠ざかるようになっていました。

先日、Kindleのunlimitedのリストにあがっていたので、久しぶりに読んでみました。

 

 

表題にある「1ドルの価値」や「賢者の贈り物」などは、あらすじを言えるだけでなく、登場人物たちの心情を解説できるほどですから、学生の時に授業で深く読み込んだのでしょう。

ただし、1作目の「多忙な株式仲買人のロマンス」は読んだ記憶がありませんでした。あるいは、読んだことがあっても忘れていたかも知れません。

ほかにも、そういう短編があり、新たに面白さを再発見しました。

「多忙な株式仲買人のロマンス」については、物語の前半にいくつかの謎が配置されています。

なぜ婦人速記者は株式仲買人マクスウェルのデスクのそばでぐずぐずと居残っていたのか?

なぜマクスウェルは新しい速記者を雇うつもりでいるのか。

マクスウェルは幸せそうな表情の婦人速記者に「何か用でもあるのかね?」と冷遇し、紹介所から紹介された新しい速記者を「今の速記者の働きに満足しているから新しく雇うつもりはない」と追い払います。

これらの「ちぐはぐな状況」を説明し、解決する理由が、最後の婦人速記者の言葉で語られます。

短編小説の「起承転結」が見事にはまって、気持ちが良い瞬間です。

O・ヘンリーは、やはり面白いですね。これから先も何度も読み返していくのでしょう。